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主に音楽と声優について四ツ谷から発信します

南條愛乃が僕たちの手からサイリウムを手放させる日(前編)

この記事は、ラブライブ! Advent Calendar 2016 - Adventar 2日目の記事として更新されました。この記事を読まれる方とは、おそらくここから30分ほどの非常に長いお付き合いとなることが予想されるため、内容を3行にまとめます。それでは、駄文ではありますがお楽しみください。

南條愛乃さんの3rdアルバム『Nのハコ』制作までのエピソードはこんな感じです。

南條愛乃さんのアーティスト活動はμ'sメンバーのなかでも特異です。

③"南條愛乃はFantasy"だけじゃない。

 

 

まえがき

南條愛乃さん*1っているじゃないですか、声優の。昨年は声優としてデビュー10周年を迎え、今年7月には3枚目のアルバム『Nのハコ』をリリースし、全国5箇所を巡るライブツアーをやったことが記憶に新しいと思います。今年4月には出演作「ラブライブ!」でμsのメンバーである絢瀬絵里役として東京ドーム*2のステージに立ち、輝かしい6年もの時間にひとまず幕を降ろしました。現在、μsのメンバー9人のうち8人が声優アーティストとしてデビューを果たし、*3活躍の場を広げている現状ですが、そのなかでも一際、私の瞳には「南條愛乃」という存在が特異に映ります。あなたからみた「南條愛乃」はどんなふうに映っていますか?

 

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 μsのメンバーは女性声優界のビッグネーム

μsといえば、デビュー当初は声優として新人ばかりの「誰だこれ?」みたいな顔ぶれだったのに対し、今や誰もが大型フェスやイベントには引っ張りだこのスターダムになるまで階段を駆け上がりました。なかでも、内田彩さんと三森すずこさんはそれぞれ今年の8月と10月に日本武道館での単独ライブを行うほどの支持を得ています。その他にも、楠田亜衣奈さんは来年2月に3rdアルバム発売が決定、久保ユリカさんは今年12月に3枚目のシングルを発売など、時には個々の活動を追いきれなくなるほどその活躍ぶりは目覚ましいばかりです。μsのメンバーはいわば「オーシャンズ11*4の俳優陣がごとく、それぞれのメンバーが多方面で活躍をしています。「ジョージ・クルーニーがいる。」「マッド・デイモンもいるぞ!」「おい、マジかよブラット・ピッドまで揃ってるぜ!」といったのと同じように、大型アニソンフェスの出演アーティスト欄を見ると「三森さんと掘さん(Pileさん)揃ってんのヤバ!soldier gameじゃん!」*5と興奮を隠しきれなくなる方も多いのではないでしょうか?そんなひとりひとりがバケモノ級のメンバーが9人揃っていたμs。女性声優界のオーシャンズ11と呼ぶにふさわしいでしょう。

 

 

 何が南條愛乃を輝かせるのか

ところで、アーティストして名を上げるには何が有効な手段となるでしょうか?歌が上手い、楽曲が良い、有名アーティストを迎えた共同制作曲、その他にも様々なものがあると思われます。あなたが仮にアーティストだとして、目の前には10組のアーティストとそれを見守るリスナーが並んでいるとしましょう。そのステージで他の10組と同じことをしたとしても、あなたはおそらく目立ちません。アーティストとして名を上げるには、他のアーティストとの明確な区別がつく歌声、楽曲、姿勢などが必要です。つまり、必要なのは「差異」を生み出すことです。

さて、μsのメンバーでアーティストとして活動している8人のうち、何が南條愛乃という存在に他のメンバーとの明確な差異を与えているとお考えでしょうか?私はこれを「バラード楽曲への意識の高さ」「ライブ参加者に対して楽曲へ100%の理解を求めること」「作品において自己を絶対化しないこと」の3点だと考えます。

 

 

ハコの中身はなんだろな

南條愛乃と他のメンバーとの違いを語る前に、ここで3rdアルバム『Nのハコ』のコンセプトについて軽く解説を施します。Nのハコ』は南條愛乃3枚目のアルバムとして制作され、南條さんの32歳の誕生日の翌日、2016713日に発売されました。初回限定版は全13+カバーアルバム付きの全18曲の大ボリュームな一枚となっております。このアルバム、何がすごいってアニメタイアップは1曲しか収録されていないところなんです。*6つまり、新規撮り下ろし曲が収録曲のほとんどを占めており、制作サイドも大変だったのだろうということが伺えます。本当にお疲れ様でした。南條さんは、ほぼ一月ほどレコーディングをされたそうですが、あまりの曲数の多さに「一生Nのハコのレコーディングしてんじゃないか」と思っていたことを発売日前日のニコニコ生放送において仰っていました。そんな今回のアルバムのコンセプトは以下のようなものでした。

「今の南條愛乃をひとつの入れ物として見たとき、何が入っていると思いますか?何が入っていたら楽しいと思いますか?」

このコンセプトに至るには3つの理由がありました。

⑴ 新たなツアースタッフとの環境になり、当初予定していたコンセプトがそこでは十分に表現できないと思った。

⑵ 『東京1/3650』で自身の想いを歌詞に出し尽くしたため、インプットがしたくなった。

⑶ 様々な活動を通して、声優としても大きな区切りを迎え、周りの人間の自身への見方を知りたくなった。

 

まずひとつめに、南條さんを取り巻いていた環境の変化が挙げられます。

もともと、こういうコンセプトで行きたいなっていうのが別にあったので、最初の打ち合わせでは違うイメージを提出していたんですよ。でも、実際に細かく考えたり、今の自分を客観視すればするほど、当初のイメージではハマらない気がするなあと。2回目の打ち合わせで、「コンセプトを変えさせていただくのはありですか?」と話をしたんです。

出典:  あのころの私と今の私――テーマは「南條愛乃はどう見えていますか?」『Nのハコ』インタビュー - BIGLOBEニュース 

「東京 1/3650」を作っている最中から次のアルバムのイメージを考えていたんですけど、私自身、そのときは今回のようなコンセプトは想定してなかったんですよ。でも2ndアルバムをリリースする話が具体的になったときに、アルバムを引っさげて行うツアーのスタッフが変わることになったんです。当初考えていたコンセプトと新たな環境、この2つにギャップを覚えたんですね。そもそも当初のコンセプトは、変更前のスタッフたちとやりたいと思っていたことだったので。それで現在の環境と自分の中の気持ちなど改めて考え直して形となったのが、今回のコンセプトでありアートワークなんです。 

出典: 南條愛乃「Nのハコ」インタビュー (1/4) - 音楽ナタリー Power Push

 

続いて、『東京1/3650*7制作後の彼女の心境の変化が挙げられます。

1stフルアルバムの『東京 1/3650』で過去の自分をもとに歌詞をアウトプットしたカラカラの状態で、次に私は何を書きたいのかをずっと考えていたんです。漠然とではありますが、前作よりもライトに聴ける内容がいいなあとか。だけどいざ制作にうつるとなった時、アルバム一本分なにかをアウトプット出来るほどエネルギーも溜まってないんじゃないかと思いまして。 

 

正直言えばアウトプットよりもインプットしたい、吸収したい、という欲求の方が上回っていたんですね。さらに言うと、色んな仕事が平行して進んでいたので、自分自身とは何なのか、それを俯瞰で見てみたくなったんです。「自分のことを客観視したい」、「自分から出てこない音楽に触れたい」そんなコンセプトでいけませんか?となったのが、2回目の打ち合わせの時です。

出典:  あのころの私と今の私――テーマは「南條愛乃はどう見えていますか?」『Nのハコ』インタビュー - BIGLOBEニュース 

 

最後に、「南條愛乃とはどんな人間なのか」を彼女が知りたくなったという理由が挙げられます。以前、内田彩さんはラブライブ!のファンミーティングツアー2015 幕張公演*8にてこのように仰っていました。(意訳)

ここにいるひとりひとり、それぞれラブライブ!に出会った瞬間が違っていて、それぞれが違った歴史を持っている。

この言葉と同様に、南條愛乃という声優/アーティストを知ったきっかけはこれを読んでいる方々の間でも少しばかり異なってくるはずです。出会った場所、初めて聞いた曲、媒体、様々なものがあると思います。もちろん、想いの懸け方なんかは異なっているに違いありません。南條さんも次のように語っています。

私は変わらないつもりでいますけど、「南條愛乃」をどこで知ったかによって、その見方や捉え方はさまざまかもしれない。最近特にそう思う事が多くあったんですね。声優業やfripSideとしても、いろいろな作品に関わらせていただけたので。だからこそいろんな方向から光を当てることで、「南條愛乃像」の輪郭がハッキリ見えてくるかもしれない。

 

「みんなが私のことをどう見てるのか、なんか気になっちゃった」っていうのが一番の理由なんですけど(笑)、自分自身のアイデンティティが揺れていたというか、「今の私って何者なんだろう?」って考えるところはずっとありましたから。でも自己評価とほかの人の私に対する評価ってたいてい違うじゃないですか。だったら南條愛乃という人にいろんな方向からの光を当ててみれば、私は何者なのか、よりはっきりとわかるのかな?って考えた感じですね。

出典: 南條愛乃「Nのハコ」インタビュー (1/4) - 音楽ナタリー Power Push

これはおそらくラブライブ!の影響が大きいのでしょう。前述の通り「声優として大きな区切りを迎えた」とありますが、ラブライブ!では東京ドームの晴れ舞台に立ち、ひとまずその活動に幕を降ろすこととなりました。ラブライブ!は彼女の一番の出世作と呼んでも良いほど、多くのファンを生み出しました。そんななかで、時に本人は思っている以上に賛美されることもあったでしょう。そのようなことが今回のアルバム制作への要因のひとつだと考えられます。

 

今回、収録曲全13曲のうち、『きみからみたわたし』『ゼロイチキセキ』『ツナグワタシ』『今日もいい天気だよ』の4曲を除いて、彼女が昔から親交のある作家/声優/アーティストの方々に作詞を依頼されました。

私が東京にいる10数年で出会った(クリエイターの)方で、そう多くはないんですけどプライベートでも親交があるような方達……その方々に「南條愛乃ってどう見えていますか?」っていうのを歌詞にしてもらったら面白くないですか? と提案しました。

 

このような方法をとり、『Nのハコ』のコンセプトは「今の南條愛乃をひとつの入れ物として見たとき、何が入っていると思いますか?何が入っていたら楽しいと思いますか?」というコンセプトに落ち着いたわけです。

出典:  あのころの私と今の私――テーマは「南條愛乃はどう見えていますか?」『Nのハコ』インタビュー - BIGLOBEニュース 

 

ちなみに、南條さんは続くライブツアーについて次のようなコメントを残されていますが、これについては別の機会にお話し致します。

本当の意味でこのアルバムが完成するのは、アルバム発売後のツアーが終わる頃かなって思います。「東京での10数年で出会えた人たち」という意味では、ファンの方達の存在はとても大きいですからね。なのでツアーが終わる頃、南條愛乃とはの答えが何かつかめるかもしれない……し、何もつかめないかもしれない(笑)。特になにも変わらなかったとしても、それはそれである意味リアルだなと思います。

出典:  あのころの私と今の私――テーマは「南條愛乃はどう見えていますか?」『Nのハコ』インタビュー - BIGLOBEニュース 

 

 

南條愛乃は人とは違う道を歩く

それでは順に見ていきましょう。まず一点目に「バラード楽曲への意識の高さ」です。皆さまはμsメンバーのソロ活動におけるバラード楽曲、いくつ言えますか?三森さんでいえば2ndアルバム*9で初の挑戦となった『ハーモニア』、内田さんも同様に2ndアルバム*10で初めて収録されることになった『ハルカカナタ』、PileさんであればMISIAの楽曲にも聴こえるまでの名曲『Not Alone*11などが挙げられます。では、南條さんの楽曲ではいくつあるでしょう?1stシングルよりミディアムバラードの『君が笑む夕暮れ*12や、1stアルバム*13収録のピアノと同時収録された『カタルモア』、その他にもリリース順に1stアルバム『カタルモア』より『Blue』『夜、静かな夢』、2ndアルバム『東京1/3650』より『だから、ありがとう』、3rdアルバム『Nのハコ』より『きみからみたわたし』『ヒカリノ海』『ヒトビトヒトル』などが挙げられます。

 

今回、南條さんの楽曲には一体どれくらいの割合でバラード楽曲が収録され、それは他のメンバーとどのくらい違う数値を弾き出すのかを計算しました。できるだけ公正な判断をするため、初めに定義を調べました。Wikipediaにおけるバラードの定義とは次のようになっています。

その特徴はクラシック音楽のものを踏襲しており、ゆったりしたテンポ、静かな楽想、美しいメロディラインやハーモニー、そしてラヴソングを中心とした感傷的な歌詞を音楽的な主軸とし、楽式的には、ピアノなどによる静かなイントロとエンディングに向けての劇的な盛り上がりが特徴とされる。

と言ったものの、バラードの定義は明確には決まっておらず、バラードとそうでない楽曲の境界はまちまちでしょう。世間ではバラードと言われていても、「これホントにバラードなのか…?」と頭をひねるシチュエーション、私にもあります。そこで、「バラード」という言葉を「しっとりとした聴かせるための曲」や「オタクが棒を振れなくなる曲」と言い換えて楽曲をバラードか否か振り分け、数値化してみました。何度も言いますが、あくまでもこれは私の主観での判断です。

 

さて、バラード楽曲の数を持ち曲の合計数で割ったところ、南條さんの持ち曲のうちバラードが占める割合は約30%でした。これは他のメンバーと比較すると、Pileさんの12%や内田さんの3%、最もその数値が高いもので楠田さんの17%よりも圧倒的に高い数値が反映されました。他のメンバーに比べ、南條の持ち曲には圧倒的にバラードが多いと言えるでしょう。ソロデビューをしている8人のメンバーのなかでも、南條さんは持ち曲の合計数が35曲と、内田彩さんの36曲に次いで2位となっており、その数の多さにも納得いただけるはずです。これは明らかに他のメンバーとは違う路線で活躍している「差異」と呼べるものではないでしょうか。

 

また、楽曲のクオリティに関しても一切の妥協が感じられません。3rdアルバム収録『ヒカリノ海』や『ヒトビトヒトル』といった楽曲は特にそうですが、そのアルバムの中であっても他の楽曲陣とは異なった幻想的な世界観を感じさせます。時にアニソンであり、時にアニソンの次元を越えると呼べば良いのでしょうか。声優音楽とは時に非常にその枠を捉えることのできない楽曲を世に送り出しますが、まさにこの2曲がそれにあたると言えることでしょう。この他にも、他のメンバーの楽曲陣との明らかな差異を見て取れるものがあります。彼女の楽曲には明らかに音数が少ないものが存在します。特に、前述の『カタルモア』『だから、ありがとう』という2曲ですが、このどちらもが南條さんの歌声とピアノの伴奏のみだけで構成されています。『カタルモア』に至っては2012年末に発表された作品ですが、2016年も終わりを迎えようとしておりますが、未だにピアノ旋律のみをバックに自身の声だけで勝負をしている楽曲は他のメンバーのものには未だ存在していません。ピアノ旋律の上で自身の世界を表現するのは2016年現在、南條愛乃ただ一人というのが現状です。これは他のメンバーとの明らかな「差異」だと言えるでしょう。

 

 

できることなら全曲ピアノだけにしたいくらいだったんです

このようなバラード楽曲の豊富さには、彼女の嗜好が影響しています。1stアルバム『カタルモア』完成インタビューの際、このような発言がみられました。

もともとがピアノだけの曲などがすごく好きなので、できることなら全曲ピアノだけにしたいぐらいだったんです(笑)。でも、それは「ダメ!」って言われて、そりゃそうですよねって(笑)。

出典: ミニアルバム『カタルモア』でソロデビューを果たす南條愛乃の想いとは――発売直前インタビュー - ファミ通.com

 1stアルバムの『カタルモア』や2ndアルバムの『だから、ありがとう』といった曲調と同様のピアノ一本のみの楽曲ですね。これらの2曲はどちらも彼女の嗜好を反映した楽曲でしょう。ちなみに、『カタルモア』にはこんな制作秘話もありました。

1曲だけどうしても(ピアノだけの曲を)入れて欲しいということで、すごくシンプルな『カタルモア』という曲をしほりさんに作っていただきました。2年前からやりたいことをずっと相談していただけあって、「南條がやりたいことはこういうことでしょ?」というのをしっかり表現してくださっている曲だと思います。

出典: ミニアルバム『カタルモア』でソロデビューを果たす南條愛乃の想いとは――発売直前インタビュー - ファミ通.com

『カタルモア』『だから、ありがとう』の2曲はどちらも作詞は南條さん、作曲はしほりさんです。アーティスト活動以前から10年以上にわたって親交を深めてきたお二人。そんな彼女たちだからこそ生まれてきた曲があったのだと思います。『Nのハコ』では残念ながらピアノのみの楽曲は収録されませんでしたが、これらの記事より、南條さんのバラード好きには昔からの嗜好が反映していると言えるでしょう。

 

今年で芸歴11年目

そして、バラード楽曲を高いレベルで歌いこなすことをを可能としているのは、南條さんの声優としてのキャリアの長さが要因だと考えられます。まず何よりも、アーティストとしての表現力の高さについて言及しなけばなりません。声優キャリアも11年目とベテランの域にも入った彼女。多くの役柄を演じ、時にその役に入って日常生活で涙するまで、彼女は声優として生きてきました。*14彼女の10年で培われた表現力は楽曲制作においても大きく反映され、『idc』などのポップな楽曲もあれば、『黄昏のスタアライト』といったシンセベースがキマった一曲、そして前述の『カタルモア』などといったバラード楽曲など幅広いジャンルに対応でき、なおかつその楽曲の良い部分を引き出せることが魅力だと言えます。彼女の声優としてのキャリアが短く、経験も浅く、これほどまでの表現力が培われていなければ、おそらく『Nのハコ』といった名盤を出すまでを出すまでには至らなかったことでしょう。

 

次にアーティストとしてのキャリアの長さが考えられます。μsのメンバーにおいて、南條さんは誰よりも早い201212月にソロデビューを果たしました。事実1stアルバム『カタルモア』から2ndアルバム『東京1/3650』の発売までの間には約2年半の間があるものの、201311月にシングル『君が笑む夕暮れ』、更にその1年後に201411月に2ndシングル『あなたの愛した世界』、そして3rdシングル4thシングルを2ndアルバム発売手前で発表したのでした。当時は「1年のうちに1枚しかシングルを出さないアーティスト」とも呼ばれており、ワンマンライブと呼べるものも、バースデーイベントしかない年もあるくらいでした。活発にアーティスト活動を始めた2015年が実質のデビューだと思われるかもしれない一方、ソロでのアーティスト活動が長いと思われている三森すずこさんの例もあります。彼女は1年に1枚はアルバムを出すというコンスタントなアーティスト活動を行なっているように見えますが、デビューは2013年の4月に1stシングル『会いたいよ会いたいよ!』をひっさげてのものであり、南條さんに若干遅れてのスタートとなります。また、持ち曲は全36曲、その成長速度の速さに思わず目が眩みそうになるアーティストAya Uchidaこと内田彩さんですが、彼女のデビューは201411月と南條さんとは約2年のアーティストとしてのキャリアの差があります。このように、活動性に乏しい空白期間が存在するものの、事実上彼女はメンバーの中でアーティストとしてのキャリアが一番長いということが言えます。

 

 

アーティストとしてのもうひとつのスタート

南條さんはfripSide2代目ボーカルとして200911月に『only my railgun』でもアーティスト活動としてももうひとつのスタートを切っていました。fripSideとして初めて出演したアニサマでの歌唱は、本人も「本当に緊張していて記憶がない」とのことで、お世辞にも現在のfripSideでフロントマンとして立つ彼女の姿とは程遠いものでした。それから数年の時を経て、2015年には初の横浜アリーナワンマンライブ、精力的なライブツアーの開催、今年の年末にはロッキンジャパンへの出演、そして20173月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブと非常に精力的な活動を行なっているfripSide。そして、そこには当時とは打って変わって、歌うことを楽しみ、堂々とした姿の南條愛乃がいます。彼女が今日もステージで輝けるのは、何よりも7年間での経験の賜物であり、それがソロアーティストとしての活動にも影響を及ぼしていることは言うまでもないでしょう。このような点でも、彼女は他のメンバーよりも恵まれた境遇にいたことが伺えると思います。

 

ちなみに話は逸れますが、南條さんは2010年からソロ活動へのイメージを持っていたそうです。

私のほうから「やりたい」という話を2年ぐらい前からさせていただいてたんです。歌を歌いたいということはデビューしたころから漠然とあったんです。キャラソンをいくつか歌わせていただいているなかで、fripSideとしての活動が始まり、いろいろな楽曲を作ったりイベントに出たりするうちに「ライブだったらこういう演出をしたいな」とか「こんな曲が歌いたいな」ということを思い始めたんですよね。でも、それはデビューする前に聴いていたバラードやおとなしめの曲のイメージが中心になっているものだったので、fripSideの世界観には絶対に合わないものだったんです。それで、fripSideとは別に、こういう世界観のものをやってみたいという話を事務所に相談したことがきっかけでした。

出典: ミニアルバム『カタルモア』でソロデビューを果たす南條愛乃の想いとは――発売直前インタビュー - ファミ通.com

ここでは割愛しますが、南條さんのソロデビューまでに2年の時間を要したのは、以前の事務所との話し合いの時間が長すぎたせいでもありました。そんな当時の彼女の相談にのったうちの一人が前述の『カタルモア』を共に制作したしほりさんだっと多くのインタビューで話されています。 しほりさんやその他の南條さんを支えていた方々の存在、そして何より、声優としてのキャリアのなかでキャラソンを制作すること、そして何よりfripSideのボーカル、アーティストとして人前に出たことがソロデビューへの大きな要因であることが伺えます。これらのことが一つの線の上で繋がり、南條さんが現在声優アーティストとしてシーンのトップで活躍していることが嬉しいばかりです。

 

 

ちょっと休憩

いかがだったでしょうか?ここまで南條さんの作品やキャリアについて解説して参りました。後編では実際にライブでどのようなことが行われているかを綴っていきたいと思います。

 

↓ 後編はこちらです ↓

amadamu.hatenablog.com

 

 

 

*1:南條愛乃。1984年7月12日生まれ。静岡県焼津市出身の日本を代表する女性声優。愛称は「ナンジョルノ」であるが、彼女のファンに自身より下の世代が増えたせいか、最近は「南條さん」と呼ばれることが多くなった。代表作として「ラブライブ!」より絢瀬絵里、「じょしらく」より空琉美遊亭丸京、「森田さんは無口。」より松坂花、「バカとテストと召喚獣」より工藤愛子、静岡県発祥アニメ「パンパカパンツ」より「パンパカ」などが挙げられる。カメラ、おしゃれが好きな愛猫家であり、自宅では2匹の猫を買っている。限りなく内向的に近い外向性を保ちつつこの年まで声優業界を生き抜き、昨年遂に10年目のキャリアを迎えた。インドアで、ゲーム「ファイナルファンタジーⅩⅣ 新生エオルゼア」を好んでプレイする。自宅には炊飯器がなく、長らく自炊をしていないとのことである。(ただし料理ができないというわけではないらしい。)ここまでの説明を読むと、一見ただのオタクに見えるが、その声は聴くものを優しく包み込むようなソプラノボイスで、思わず聴く人の肩の力を抜く。また、アニメ「とある科学の超電磁砲」などの主題歌を担当したユニット「fripSide」の2代目フロントマンを務めていたりと大忙しである。

*2:2016年3月31日と4月1日に東京ドームにおいて2日間にわたり開催された「μ's Final LoveLive! ~μ'sic Forever ♪♪♪♪♪♪♪♪♪~のこと。5時間に及ぶステージで全44曲が披露された。劇場版「ラブライブ! The School Idol Movie」の世界において、μ'sは3年生の卒業と共に解散の決断を下したため、声優の方のμ'sの活動においても、一旦ピリオドを打つ形となったアニメ業界から飛び出した声優アーティストが東京ドームで単独ライブをするというのは異例であり、チケットは入手困難、演目は最高の一言に尽きた。ちなみに私はベルリンから片道15時間掛けて2日間現地で参加しました。ありがとうございます。

*3:高坂穂乃果役 / 新田恵海さん 園田海未役 / 三森すずこさん 南ことり役 / 内田彩さん 西木野真姫役 / Pileさん 星空凛役 / 飯田里穂さん 小泉花陽役 / 久保ユリカさん 東條希役 / 楠田亜衣奈さん 絢瀬絵里役 / 南條愛乃さんの8名。矢澤にこ役 / 徳井青空さんのみ現在もアーティスト活動は行なっていない。しかし、彼女は今年10月に開催された自身の主催イベント「みらくる青空ナイト vo.9」において、彼女が演じてきたキャラクターの歌を披露していたりなどする。

*4:2001年に公開されたアメリカの映画。出演陣が豪華。

*5:μ'sの2ndライブ「μ's New Year loveLive! 2013」において三森すずこさんとPileさんが歌唱した楽曲。通常は南條愛乃さんも加わった3人で歌唱されるが、2012年の南條さんのソロ活動などの予定が重なり、このライブに南條さんは残念ながら不参加。結果として残る2人で披露された。また、この後3人体制での『soldier game』は披露されておらず、「我々はそれが聴けるまでは死ねないのではないか」と私は思っています。

*6:5thアルバム『ゼロイチキセキ』のこと。タイアップ作品は「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った」である。ちなみに、この作品は人と人との繋がりを謳った作品であり、「エオルゼア」をプレイしている経験をもとに南條さんが作詞を施したものである。「南條愛乃から見た別の南條愛乃」という彼女の一面を描いた作品であり、『Nのハコ』のコンセプトにぴったりと合致しているため、決してアルバムの中でも浮いた作品にはならなかったのがすごいところ。

*7:南條愛乃さんの2ndアルバム。彼女の声優デビュー10周年記念に制作された。2015年7月22日発売の全13曲収録作品。また、同日に内田彩さんの2ndアルバム『Blooming!』は発売され、本人たちをよそに、南條さんの所属するNBCユニバーサルエンターテイメントと、内田さんの所属する日本コロムビアでバチバチの殴り合いがあったことが伺える。

*8:μ's Fan Meeting Tour 2015 ~あなたの街でラブライブ!~のこと。全国10箇所で25公演が開催された。開催地は日付順に東京/横浜/幕張/福岡/長野/大阪/広島/名古屋/札幌/仙台である。普段ライブに来てくれるファンのために、演者側が全員、またはユニットや学年ごとに日本各地へ飛び回り会いに行くといったコンセプトであったが、実際はこれまで陽の目を見ることのなかった未披露の楽曲や、ライブで演奏される機会が少なく、その後ファイナルライブでも披露されないままに終わったレア曲が"地方公演"のみで数多く披露された。具体的には『硝子の花園』『愛は太陽じゃない』『silent tonight』『私たちは未来の花』『after schiil NAVIGATORS』などが挙げられる。そのため、チケットを入手していなかったファンは、ファンミが開催される週末ごとに悲しみをツイッターに書き込むという阿鼻叫喚の絵図となった。特に、7月12日に開催された広島公演では、printempsが出演し、アンコールにおいて伝説の未披露楽曲『ぷわぷわーお!』が披露された。この楽曲はアニメ1期のBlu-ray/DVDをゲーマーズにて全巻購入した者にのみ特典として配布されたいわゆるレア曲であり、その後のファイナルライブでは勿論披露されることはなかった。あまりのレア度のため、当日は各地で暴動が起きたほどである。ちなみに、会場となった広島県にはゲーマーズはないことがまたひとつ笑いのタネである。

*9:三森すずこさんの2ndアルバム『Fantasic Funfair』は2015年4月8日に発売された作品。上記の『ハーモニア』を収録。なおこのアルバムは名盤である。

*10:内田彩さんの2ndアルバム『Blooming!』は2015年7月22日に発売された作品。言わずもがな名盤である。上記の『ハルカカナタ』を収録。

*11:Pileさんの1stアルバム『Jewel Vox』は2015年3月4日に発売された作品。上記の『Not Alone』を収録。

*12:1stシングル『君が笑む夕暮れ』は2013年11月27日に発売された作品。アニメ「東京レイブンズ」のEDテーマ。2ndシングル『あなたの愛した世界』は2014年11月5日に発売された作品。アニメ「グリザイアの果実」のEDテーマ。3rdシングル『黄昏のスタアライト』4thシングル『きみを探しに』はそれぞれ2015年の4月29日と6月10日に発売された作品。どちらもアニメ「グリザイアの楽園」のEDテーマである。

*13:1stアルバム『カタルモア』は2012年12月12日に発売された。形態としては全6曲のミニアルバムとなっている。これには、当時ソロデビューをするにあたり、2枚目以降の作品を出す際に方向性をキッチリと固めないため、いわば「おためし」のような感じで様々なジャンルの楽曲を収録する目的でこのような形態が取られた。

*14:2.5次元TV企画「逆襲のナンジョルノ in 奈良」において、かつて自宅でTVを観ていた際、奈良県春日大社が映り思わず悲しい気持ちが引き出された南條さん。何故かと思考を繰り返すうちに、かつてD.C.Ⅱにて演じた月島小恋の失恋に関係していた場所だと気付いたというエピソードが紹介された。