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川崎の工場地帯出身のラッパーとHiGH AND LOWと内田彩さんが好きです

Teenage Symphony For You & Me 〜十代交響曲はまだ序章〜

4月30日、恵比寿ガーデンプレイスホールにて、山崎エリイさんによる"山崎エリイ First Live 2017 Teenage Symphony For You"が開催された。

 

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この日の夜はデビュー曲「全部キミのせいだ」と共に幕が上がった。

いきなりだが、曲中にこんな歌詞がある。

耳を澄ませているよ ドキドキするメロディに

カラッポだった胸に 奇跡が今溢れていくよ

全部キミのせいだ 全部キミのせいだ

全部キミのせいだ 楽しくて眠れないよ

この「全部キミのせいだ」というタイトルは、"〜のせい"という言葉のため、一聴するとこの曲の主人公が"キミ"に向かって何か不都合や不満を訴えるように感じられるが、決してそうではない。

山崎さんがこの後のMCで話していたが、"〜のせいだ"というよりは、"〜のおかげで"という言葉の方が正しい。しかし、敢えて前者の言葉を用いているというものだった。

全部"キミ"の"おかげ"

彼女とファンが一夜限りの宴を行う、まさにこの夜のステージのテーマであったTeenage Symphony "For You"にふさわしいスタートを切った。

 

「Lunatic Romance」では照明が赤と青を中心にレイヴ感を増し、マイクスタンドを妖艶に扱う彼女の姿が見られた。

この曲では終始タンバリンを片手で演奏していたが、これは2週間程前にスタッフと決めたことなのだとか。

「三本締めも出来ない私が…」と自虐を交えつつも、このステージに上がるまで日常生活でひたすらに腿を叩きタンバリンの練習をしていたと語る。

 

「空っぽのパペット」でも同様にクールな彼女の姿が見られた。

「Lunatic Romance」「空っぽのパペット」には、ファンより届いた手紙に思い出があるとのことで、「『僕はこの曲が…!』と熱いお手紙を以前拝読しまして…」とファンの想いを語った。

また、スタッフより「この曲には感情を晒け出したいけどそれが出来ない、熱があるんだよ」と力説されたと語る彼女。全ての楽曲において、その曲(=物語)の主人公がどんな人物でどんな出来事、心情がそこにはあるのかを徹底的に考え抜くことが知られている彼女だが、この曲の魅力を引き出すには苦戦したとの話もあった。

 

この日最初の衣装であった肩出しワンピースに身を包み、ふわっとしたMCが始まる。

MCではこれまでに披露した3曲の解説、そしてライブのテーマ等が語られた。また、この日のセットを見て、「知る人ぞ知る、森の中の隠れ家を表現したかった」と述べられた。約700人近くが所狭しと"集結"したこの日のライブ。ファン一同がこの日を待ちわびていたことも含め、ひっそりとだが盛大に祝う一夜だけのパーティにふさわしいセットだったのではないだろうか。

 

MCを挟んで披露されたのが「全部、君のせいだ。」収録の最高なエレクトロポップチューンこと「ドーナツガール」。

ありえないくらいに最高なベースラインが魅力の同曲だが、作編曲はあのhisakuni先生。ありがとう。

この曲では、彼女が客席へと降り立ちフロアを一周した。この後に語られたMCによると、「ドーナツガールの主人公の女の子はちょっといたずらっこ。カフェのテラス席で隣に座ってるカップルの話を聞いてたり…だから、私も今回はちょっといたずらっこ風にみんなのところへ行きました。」とのことであった。

思わぬサプライズに、彼女が横を通った後のファンは総じて幸福で絶命しそうな顔をしていた。

個人的には、ダンスミュージックは踊らなければ失礼に値すると考えているため、着席ではなくフロアで音に身を委ねたかったものである。

しかし、この後も紹介する彼女が"1stライブでやりたかった3つのこと"の1つ目がこの"ファンのところへ自身が行くこと"だったため、素直に感謝の意を評したい。

 

続いて披露されたのは「雨と魔法」。

アルバムの中でも特徴のある、80-90年代の歌謡曲がベースとなっている楽曲だ。"松田聖子が好き"という彼女の想いが反映されたのか、同時代のメロディーラインがそのまま2017年に再現されたと言うべき楽曲であった。

盛り上げるだけがライブでない、というメッセージがあるのかは定かではないが、着席してこの曲を楽しむファンの顔は非常に緩かったのが印象深い。

 

MC後、今度はバラードコーナーが始まり、「My first love」「Pearl tears」が続いて披露された。

「My first love」では家族や大切な人への想いをしっとりと、しかし力強く歌い上げた楽曲。曲の進行と共に神聖さを感じるピアノ、大サビのブレイクなどが印象的だ。

GLAYの名曲「ずっと二人で」を歌唱する際のTERUをリスペクトしているのか、彼が同曲を歌い上げる時と同じように、曲の後半部では目を瞑り、想いを込めていた姿が非常に心に残っている。

「Pearl Tears」は彼女のキャリアにおける初めての作詞曲である。

約6分20秒に渡り、彼女と愛犬の関係を、人魚姫の切ないエピソードをメタファーとして語りあげたものだ。この楽曲は特に多くのファンの胸に突き刺さり、家族や恋人など、大切な人々のことを考えさせた有意義な時間だったと私は考えている。

 

「Pearl tears」演奏終了後、山崎さんはステージを去り、会場は暗転。

山崎エリイ自身が彼女のここまでの軌跡を振り返る音声が流れ始めた。

ここでは彼女がこのライブを開催するまでの道のりが語られ、そこには3つの転機があったという。

ひとつめに、ホリプロスカウトキャラバンのファイナリストに選出されたこと。

これは他媒体などでも語られているが、昔から歌うことや踊ることが好きだった彼女。しかし、このイベントに応募した当初は、到底ファイナリストとして名を連ねることはないだろうと思っていたらしい。楽屋で帰宅の準備をしていたら、スタッフに「貴女、ファイナリストですよ。」とも言われたそうだ。

そしてふたつめに、木戸衣吹さんとevery♡ing!を結成したこと。

声優アイドルとしてデビューし、アニメの主題歌を歌い、またその作品に声優としての出演することが出来たこと。

2015年に開催されたキングスーパーライブ、ANIMAX MUSIX 大阪公演、アニメロサマーライブ2016と大型アニソンフェスへも出場を果たしたことへの喜びも語られた。

そして最後に、2016年11月16日。デビューアルバム「全部キミのせいだ」2017年4月19日。1stシングル「十代交響曲」を発売したこと。

ソロアーティストとしても活動できる喜びを、制作スタッフへの厚い感謝が添えて語りあげられた。

ナレーションの終盤、「今日みなさんに見てほしいものがある…」との言葉が出た。

 

ここでステージに戻った彼女。ここから、このライブで多くのファンがど肝を抜かれたであろうステージが始まった。

彼女が見てほしかったもの。それは約10年以上もの間続けてきたクラシックバレエだった。

ステージの上で指先まで感覚を研ぎ澄まし舞う山崎エリイ。たった数分間の出来事に、ファンは真剣な眼差しを向けた。

バレエの終盤、彼女は再びスタンドマイクの前へと立ち、次の曲が始まった。

 

「cakes in the box」

正直、ここからの彼女の姿が私には怖かった。というのも、普段の彼女の言動からは想像できないくらいに、あるいは誰か別の人間が憑依しているのではないかと思うくらいなオーラを放っていたからである。

この楽曲では途中、CD音源のコーラスが入っていたのだが、流れてくる声と実際に目の前で歌っている声が別モノ過ぎたのだ。今、2017年に山崎エリイが歌っている声は拳が利き、凛々しく、どこか少し冷徹なものを感じた。

この後に披露される「星屑のシャンデリア」という楽曲でもそうだったが、あまりにもCD音源で聴き慣れてきた声と違い過ぎて最早声が出なかったほどである。

正直、山崎エリイをどこか普通の女の子だと思っていたのかもしれない。本当に圧巻であった。

なお、同曲はアルバム制作の際にスタッフにどんな曲をやりたいかと聞かれ、「今じゃなくていつかでいいから、難しいけどゴシック(メタル)な曲をやりたいな。」という願いを持っていたが、気づけばそれをすぐ歌う形になったと語られていた。

 

ここでMCを挟み、先ほどのバレエが話題に挙げられた。

「なんのライブに来たのかわからなくなったでしょ(笑)」と渾身の演技をネタにしたことに会場は爆笑。この後、事前にスタッフ公式Twitterにて配信された「Zi-Gu-Za-Gu Emoions」振り付け講座の話題も併せ、普段彼女が見せているような笑顔に胸をなでおろした。

 

さて、ここで彼女がこのライブでやりたかったことの2つ目が発表される。それは"みんなで何かをする、みんなで踊る"というものであった。

そのようなわけでダンスをしようと場を盛り上げた彼女であったが、最終的には「みんなの方が私より早く覚えられるでしょ。」との声でダンス講座をとっとと切り上げ、早々に歌い出しに入ったのが実に微笑ましかった。

 

そんな「Zi-Gu-Za-Gu Emotions」は、想い人に心を寄せるも、気づいてほしいのに気づいてもらえないという"ジグザグ"な乙女心を歌った一曲である。

この楽曲も「ドーナツガール」と同様に、四つ打ちエレクトロの非常にダンサブルなナンバーで、Dメロの前乗りなキックに思わずクラップで盛り上がってしまった。ありがとうTak Miyazawaさん…この曲、あまりにも好き過ぎて以前クラブイベントでも流しました。

そして先ほども述べたDメロであるが、歌詞が100点。本当に素晴らしい。

君の瞳(め)に映った私が 愛しいならば抱き寄せて

何となく気づいているんだ 良いの…不器用でも!

この曲の作詞は、内田彩さんの「with you」や「Floating Heart」の作詞も手掛けたSUIMI先生によるものである。ありがとうございます…

 

続いては「アリス*コンタクト」

不思議の国のアリスがテーマとなっているこの楽曲では、間奏でセリフ部分も披露された。

また、ダンスはウサギがテーマとなっているとのことで、ダンスの先生と共にアイディアを練ったとのことであった。

 

前曲のファンタジーなメロディーとは一変、続けて披露されたのは「星屑のシャンデリア」であった。

「cakes in the box」と同様に、情熱的だが深淵には暗さが見え隠れするのが特徴のゴシックメタル。先程と同様に、いや、先程よりもより力強く、拳を込めて歌い上げられた。

激しいギターとドラムの応酬に負けず、彼女の奏でる力強い音色が会場中にこだましていたのを今も身体が覚えている。

MCで語られた内容によると、アリス*コンタクトから大きく緩急をつけることで、より曲が映えることを考えたといったものであった。

 

この日感じたことであるが、おそらく彼女はダンスミュージック等も歌いこなせるが、何よりも似合っているのはラウド・ロック系統の楽曲ではないだろうかと考えている。

彼女の甘い声色や見た目からはロックを歌いこなすなどとても考えてはいなかったのだが、ステージでの彼女は文字通り"豹変"する。

 

それを感じたのは、この日アンコール前の最後の一曲となった「十代交響曲だ。

この楽曲を披露する前のMCでは、"本当に楽しかった"や"まだ終わりたくない"という旨が語られ、ステージでジタバタとする彼女の可愛らしい姿が見られた。

しかしそれもつかの間。低音の力強いピアノの音が流れると表情は一変。複雑なドラムとギターが奏でるビートを乗りこなす彼女が現れた。

この楽曲は休符、つまり音の抜ける箇所が多く、非常に歌い上げるものが難しいのだが、少しリズムを崩しながらも最後までつまづくことなく曲を届けた彼女は賞賛に値する。というかホントにかっこよかった。

 

アンコールの後、再びステージに戻ってきた彼女。この時はライブTシャツにフリルを加工した衣装を身に纏っていた。

ここで披露されたのは「Dreamy Princess」。

同曲は彼女がデビュー後に始めた販売された楽曲で、配信限定の作品だったとのこと。

想い出深いこの曲をこのような形(=ソロとしての1stライブのステージにて)で歌うことができるとは思っていなかったと顔を綻ばせた。

 

この日のライブも終盤、彼女は自身のアーティストとしての心境を語った。

声優としてのデビュー当初は、「どのように何を表現すればよいかわからず…」と悩んでいたが、気づけばこの日のライブを作り上げた事務所、レーベル、ライブスタッフ、そしてファンのサポートを受けてここまで歩んでくることができたとのことだった。ここまで共に頑張ってきたファンとのやりとりを肯定した彼女の言葉「心の底から愛してる」というMC最後の一言が何よりも印象深かった。

商業的に発せられる「愛してる」なんて言葉ほど陳腐なものはないが、あの瞬間彼女から発せられたこの言葉は、商業的ではなくもっとエモーショナルな次元でのものだった。ありがとう、山崎エリイさん…

 

そんな感動もつかの間、ライブは終幕へ。

あまりにもライブが楽しすぎたのだろう、「本当に楽しくて終わりたくない!」と何度も言葉にならない声を上げ、ステージでじたばたとする彼女の姿が見られた。

良い意味で自身のキモチを隠すことができず、それが声や仕草に現れてしまう彼女の魅力が詰まった一言だったと思う。

 

そしてこの日のラストナンバー「星の数じゃたりない」が披露された。

イントロのギターリフから受け止めきれないほどの爽快感が感じられる。人間賛歌のような明るいロックナンバーに彼女のハイトーンボイスが乗る。それだけで恵比寿のホールは野外フェスの開放感を感じられたまでであった。

 

アルバムでもラストナンバーであるこの曲だが、ライブのラストとしても本当にふさわしい。

どんなにどんなに時が過ぎても
こんなにこんなに大切なものは他には無いから

君にもらった思い出は 星の数じゃたりない
どんな風にありがとうを伝えよう
僕ら誓った約束は 大人になっても忘れないから
たとえ離れても ずっと側にいるよ

この歌詞を歌い上げる時、彼女の声は少しだけか細く、涙声になっていた。

彼女がこれまでの感謝を伝えたライブ、あまりにもその状況に心情が重なったのだろう。エモすぎる。

見せてもらった輝きは星の数じゃたりない
肩を寄せて紡いだ星座だね
この一瞬は宝物 心に刻み忘れないように
どうか夜明けまで ずっと側にいてね

君にもらった思い出は 星の数じゃたりない
どんな顔でさよならをいえばいい?

この曲の披露中、少しだけ涙目になってしまった彼女だが、「笑顔でライブを終わりたい」という彼女の願いを悟っていたかのような歌詞だ。

どんな顔をすればいいかわからない…あくまでも十代的な内容ではないだろうか。 

笑顔もらってばかりだった でも勇気がたりない

最後くらい大好きを伝えたい

その瞳 温もり 全部 命の限り忘れないから

たとえ離れても いつか逢いにいくよ

きっと逢いにいくよ

この2時間で、歌にダンスにバレエに…1つ壁を乗り越えられたとは彼女の言葉。

ファンから彼女へ、彼女からファンへ。そんな想いが歌として見ることのできた瞬間だった。

 

パフォーマンスの最後、彼女は静かに瞳を閉じ、噛みしめるかのように天に上げた右の掌を握りしめた。

十代としての集大成、もう19歳としてステージでやり残したことはない、やりきった…そんな感情が垣間見れる満足げな表情だった。

彼女は嘘偽りなく19歳。まだ19歳である。

そんな彼女が、約2時間のパフォーマンスを、映像やお世辞にも豪華とは言えないセットのなかで、いわばライブとしては真っさらなステージで成し遂げたのは最早評価など不可能だ。

ありがとうZERO-A、ありがとう日本コロムビア、ありがとうSUPA LOVE、ありがとう山崎エリイさん。 

 

最後に、彼女が1stライブでやりたかったことの3つ目が発表された。彼女がやりたかったこと。それは"三本締め"

「十代交響曲」発売記念FRESH!*1にて披露された彼女のふにゃふにゃな三本締め。

今日こそは頑張ると気合いを見せたものの、相変わらずのご様子でこの日は締めくくられた。

 

さて、このライブのタイトルにもう一度目を向けてみよう。

Teenage Symphony For You」

「十代交響曲」もとい"交響曲"とは様々な形式の楽曲より成立する作品である。

この日のライブ、楽曲の面ではミディアムバラードからポップス、ゴシックロック、ダンスミュージック。パフォーマンスの面ではダンスやクラシックバレエ。そして最後の締まらない三本締めにいつものふわっとしたMC、彼女の想いや言葉。様々な側面からの"山崎エリイ"が表現された、いわばひとつの"交響曲"ではなかったではあろうか。

デビュー当初は「どうやって表現をすればいいのかわからない、どうやって自分を出していけば良いのかわからない」と思っていた彼女であったが、「星の数じゃたりない」のラストで目を瞑り、力強くやりきった想いで拳を握っていた姿には、もうそんな言葉や迷いとは程遠かった。

勝手な憶測かもしれないが、十代としての一つの集大成となったライブで、十代としての答えを手に入れたのではないか。私はそう考えている。

交響曲はまだ序章

山崎エリイは、まだ未完成な交響曲なのかもしれない。

まだそのメロディは鳴り始めたばかりだ。今後の彼女に大きな期待を寄せて、最後の挨拶とさせていただく。

 

 

【最後に】

おそらくこの公演のアフタートークが聞けるであろうイベントが、5月14日(日)に東京・科学技術館 サイエンスホールにて開催される。まだ整理券も配布してるらしいし、気になった奴らは要チェックだ!!  

山崎エリイ「十代交響曲」発売記念インストアイベント - アニメイト

*1:ネット配信生放送プログラム