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内浦、スクールアイドル、寺生まれの女子高生……『ラブライブ!サンシャイン!!』にこめられたメッセージを楽曲の歌詞より紐解く

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 「パンチライン」という言葉がある。HIPHOPにおける、楽曲の歌詞中でもっとも印象深いフレーズを指す言葉だ。静岡県沼津市内浦を舞台に、スクールアイドル・Aqoursの成長を描く、現在放送中のTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(TOKYO MXほか)の楽曲においても、リスナーの心を動かすようなパンチラインが数多く存在する。本稿では、同作の現在発表されている楽曲より、とりわけ印象に残っているフレーズを5つ紹介したい。

 

夢で夜空を照らしたい

<消えない 消えない 消えないのは 今まで自分を育てた景色>

 TVアニメ1期第6話挿入歌。歌唱当時6人であったAqoursが、地域の催しで披露した楽曲だ。物語の舞台となる内浦は、作中にて田舎町として描かれているが、そんな町のことを愛し、その土地への感謝が歌われている。そして、当時彼女たちの憧れであった、スクールアイドル・μ’sの姿を追っていたAqoursμ’sと比較し、自分たちの活動に明確な展望が見えずも、地元の仲間とともに、内浦の地より大きな夜空を照らしたいという願いが感じられる。

 HIPHOP的な側面では、hood(地元)は非常に重要なファクトのひとつであり、それは近年の日本語ラップシーンを牽引するラッパーKOHHも、「結局地元」という楽曲を制作するほど。”この地から羽ばたく”という宣言をこの楽曲で行ったAqoursは、非常にHIPHOPな存在であり、まさしく<君のhoodじゃmaybe見ないタイプ>(「Check My Ledge」/ IO)なのではないだろうか。

 

「待ってて愛のうた」

<目を閉じて聞いていたよ / くりかえす波の音を / 今日は静かに流れてく / すれ違うひともなくて / ひとりきり歩く道で ラララ…口ずさむ愛のうた>

 2ndシングル『恋になりたいAQUARIUM』カップリング曲。まだ大人になりきれない高校生が愛を考えたとき、その壮大さに思わず切なさを感じる姿が描かれている。この楽曲の歌詞は、μ’sにはなかった、とてもAqoursのオリジナリティ溢れるものだ。「波の音」という言葉は、前作『ラブライブ!』の舞台である東京都神田では聴けず、Aqoursだからこそリアルに伝えられる要素である。劇中で描かれる、高海千歌の実家前をはじめとする、内浦の海岸線沿いを歩きながら、Aqoursのメンバーがこの歌を口ずさむ様を想像できるだろう。自分ひとりの環境で、凪の穏やかさに身をあずけられる環境で歌われることで、「待ってて愛のうた」は初めて成立するのではないだろうか。

 また、<愛のうたの香りは / 潮風より青くて / もっと確かめたい香りさ / 青く切ない香りさ>というフレーズでは、「潮風」という言葉が非常に印象に残る。少し切ないピアノのメロディも相まり、聴く人を自然と作品へと引き込む力を持っている。

 

ユメ語るよりユメ歌おう

<ユメを語るコトバより / ユメを語る歌にしよう / それならば今を伝えられる気がするから>

 TVアニメ第1期エンディングテーマ。「輝きたい」という一心でスクールアイドルを始めたAqours。そんな彼女たちの「ユメ」は、高校生ではまだ確かな言葉にすることはできず、代わりに”歌”という形で想いへと昇華されるのだろう。また、<それならば今を伝えられる気がするから>というフレーズは、非常に『ラブライブ!』シリーズの文脈と内容に即したものだ。前作『ラブライブ!』において、「今」とは「輝き=楽しむこと」のメタファーであった。限られた今を楽しむからこそ輝きがある。そんなスクールアイドル的な思考も、この楽曲には反映されている。

 さらに、Cメロ後半部の<Singing my song for dream!>というコーラスも大変美しく、毎話毎話をこの曲が彩っていたことで、Aqoursの次なる物語を毎週楽しみにできたのではないだろうか。また、2番では<ユメ>という歌詞が<ミライ>に置き換わる。彼女たちの<ユメ>が<ミライ>へと繋がっていく過程が、『ユメ語るよりユメ歌おう』の歌詞によって高らかに歌われているのだろう。

 

恋になりたいAQUARIUM

<なんで水のなかでも息ができるの? / たぶんさっき飲んだ熱いお茶のせいかな / まあそんなことは 気にしないっ しないでっ / サカナたちのパーティー 楽しもうか>

 2ndシングル『恋になりたいAQUARIUM』表題曲。なぜ水のなかでも息ができるのか。国木田花丸曰く、「熱いお茶を飲んだから」とのことだ。全く意味がわからない。ただ、国木田は、寺生まれの女子高生である。のっぽパンを食い、ルビィと暮らしてきた。けれども水のなかでも息ができる道理に関しては、人一倍に敏感であった……そんな「恋になりたいAQUARIUM」の歌詞は、非常に『ラブライブ!』観の詰め込まれたものだ。「”なぜ水のなかで息ができるのか」という問いに対し、先述のように「熱いお茶を飲んだから」というトンチな回答をしているにも関わらず、次の瞬間には「そんなことは気にしない」と一蹴している。細かいことは全く気にせず、ただひたすらに突き進む『ラブライブ!』的な感覚を感じられることだろう。佐々倉有吾による「恋になりたいAQUARIUM」のサンバ的なビートもあり、非常に愉快なダンスナンバーだ。

 

HAPPY PARTY TRAIN

<ステキな旅に出よう / 人生ってさ… たくさんの場所へ続いてる ワクワクだらけさ!>

 3rdシングル『HAPPY PARTY TRAIN』表題曲。今年9月まで開催された『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 2nd LoveLive! HAPPY PARTY TRAIN TOUR』のテーマソングということもあり、この楽曲に思い入れの深いファンも多いのではないだろうか。ライブ会場では、SLが各会場の駅名を猛スピードで通過していく映像に気持ちを奮い立たせられ、気付けば終着駅の沼津へとSLは駆け抜けていった。Aqoursと共に過ごした、ひと夏の思い出を呼び起こされる一曲だ。

 そんな同曲では、先述のフレーズがもっとも感慨深い。これまで、『ラブライブ!』シリーズでは恋愛や友情をはじめ、多くの事象が歌われてきた。その一方、ここまで明確に「人生」を語った楽曲は生まれてこなかった。そして、このフレーズを歌っているメンバーは、国木田花丸だ。国木田は、寺生まれの女子高生である。寺生まれの女子高生に人生を説かれる場面は、生きているうちで数少ないものだろう。そんな彼女の語る人生とは、「たくさんの場所へ続く」もの。今後ますます活躍の場を拡げるであろうAqoursの、明るい未来へと向かう想いが込められているのではないだろうか。

 さらに、<人生ってさ…>というフレーズは、ライブにてパフォーマンスを行う高槻かなこ国木田花丸役)も、歌唱の瞬間だけ時間がゆっくり流れる感覚を覚えるという。たしかに、このフレーズだけはそんな独特の雰囲気を感じられる。人生を歌うこのフレーズだけは、国木田花丸が歌ってこそはじめてたしかな意味を持つのだろう。『ラブライブ!サンシャイン!!』楽曲史上、現在もっとも心に響く1フレーズといえる。


 Aqoursは、アニメやキャラクターボイスを務める声優によるライブが盛り上がることで、今後さらに輝きを増すことだろう。今回紹介したフレーズや、そのほかの楽曲の歌詞。そして、内浦の地に寄り添いながら彼女たちの音楽に耳を傾けることで、また新たな輝きを覗けるかもしれない。