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『ラブライブ!』は「1人でしない」物語 <FLY BOY RECORDS>とμ'sの関連性をアーティストとしての姿勢より探る

  KOWICHIが、12月13日に5枚目となるオリジナルアルバム『SPLASH』をリリース。同アルバムより、リードトラック「Day Ones feat. T-Pablow & DJ TY-KOH」のMVを公開した。

 

KOWICHI「Day Ones feat. T-Pablow & DJ TY-KOH」MV

 

 KOWICHIは、ヒップホップレーベル<FLY BOY RECORDS>を主宰する、神奈川県川崎市多摩区在住のMC。KOWICHIのリリックは、同レーベルのクルーやこれまでの人生、さらには男性心理などを、実際の出来事に忠実かつ巧みに表現する。「Day Ones」には、盟友・DJ TY-KOHのほか、同じく川崎区池上町を代表する9人組クルーBAD HOPより、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)で一躍その名を知らしめたMCのT-Pablowを客演に迎えている。KOWICHIは、現在BAD HOPが開催している全国20都市を巡るツアー『BAD HOP MOBB LIFE TOUR』にも参加しており、『SPLASH』のリリースもあわせ、ますます活躍の場を広げることだろう。そんなKOWICHIと<FLY BOY RECORDS>の代表曲に、レーベル一丸となり音楽活動に向き合うことを宣言した「バイトしない」のほか、2017年3月発表の「1人でしない feat. DJ TY-KOH & YOUNG HASTLE」がある。同曲は、KOWICHI、そして盟友のYoung Hastleが、<FLY BOY RECORDS>の仲間によって自身の音楽活動が成り立っていると歌う、支え合いの精神を描いた楽曲。

 

DJ TY-KOH「バイトしない feat. KOWICHI & YOUNG HASTLE Prod. by ZOT on the WAVE」

 

 そんな「1人でしない」には、2013年4月より放送されたTVアニメ『ラブライブ!』及び2015年6月に全国ロードショーとなった『ラブライブ!The School Idol Movie』と共通のメッセージ性を読み取ることができる。

KOWICHI「1人でしない feat. DJ TY-KOH & YOUNG HASTLE」MV

「1人でしない」 ※KOWICHIのバースより抜粋

俺のソロアルバム 仲間たちと企む

音をもらってバースを書く

録れたら仲間に聴いてもらう

意見言い合う 曲が良くなる

1人じゃない制作 全国各地回る

 

1人じゃ無理できない 支えられてるLIFE

1人でしない 恵まれてる仲間とFLY

1人でしない 俺たち1人でしない

仲間とやる1人でしない 俺たち1人でしない

 

 ラブライブ!』に登場するスクールアイドル・μ’sは、東京神田に住む高校2年生の高坂穂乃果からはじまった。穂乃果の通う音ノ木坂学院は、入学希望者の減少により統廃合の危機に。穂乃果は学校を救うべく、幼馴染の園田海未南ことりとともにμ’sを結成。その後、作曲を担う西木野真姫や、かつて同校でスクールアイドル活動をいち早く始め、同時に挫折を経験した矢澤にこをはじめとするメンバー9名が集い、切磋琢磨する物語だ。そんな同作より、第1期6話「センターは誰だ?」を紹介したい。同エピソードは、まだμ’sが1年生と2年生各3名、そして3年生の矢澤にこの7名で構成されていた頃のものだ。μ’sの始動者であるはずの穂乃果の普段見せる適当な振る舞いに、「本当にμ’sのリーダーなのか」と疑問に思うにこ。メンバーの話を聞くうちに、穂乃果がリーダーらしい務めを果たしていないと知る。結果、にこはグループのセンターを誰が務めるべきか決めるべきだと迫るのだった。同エピソードでは、最終的にセンター不在かつ穂乃果が改まった仕事を務めずとも、彼女の姿勢がリーダーの器に足るものだとメンバー全員が感じ決着がついた。

 

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 μ’s内のメンバーの関係性は、<FLY BOY RECORDS>にも通じる。μ’sでは、作詞を海未、作曲を真姫、衣装制作をことりが担当。穂乃果はそれらに大きく関わることがないものの、同グループのフロントマンを担っている。つまり、μ’sのメンバーは“全員主役”なのであり、穂乃果1人や他のメンバーだけで活動で成り立っているのではない。μ’sは9人が揃い、はじめてμ’sとなるのだ。これは「1人でしない」で歌われている<FLY BOY RECORDS>の制作模様と共通しており、トラックメイカーのZOT on the WAVEから<音をもらってバースを書く>とは、μ’sにおいてまさに真姫と海未の関係を指しているのだ。(ラッパーは自身のリリック<歌詞>を自らで制作するため、ここでは穂乃果=KOWICHIの構図とはならない)また、ことりの衣装があってこそ、μ’sは初めてステージに立てるのであり、楽曲や衣装制作の全てをとおして<1人じゃない制作>といえるのだ。

 

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 あわせて、『ラブライブ!』第2期6話「ハッピーハロウィーン」も紹介したい。同エピソードでは、秋葉原ハロウィーンイベントにμ’sが招待され、同ステージにて新たに披露する楽曲を制作する。同じくイベントに参加するA-RISEと対抗できるような、これまでのμ’sとは異なるインパクトを残したいとメンバーは試行錯誤。部活のユニフォームや、ヘヴィメタルバンドの衣装を着用するなどで、これまでのイメージを大きく変えようとするも失敗。メンバーの意見をひととおり採用した結果、これまでのμ’sの良さが見えなくなってしまったのだ。結果、メンバーは自分たちらしくステージに立つことを決意し、新曲として「Dancing stars on me!」を披露。このエピソードには、「1人でしない」の<意見言い合う / 曲が良くなる / 1人じゃない制作>という部分が意図せずとも重なるよう描かれている。μ’sがパフォーマンス向上を望み、意見を出し合う姿は、まさに<FLY BOY RECORDS>の姿勢そのものであり、これも決して“1人で”できるものではない。「Dancing stars on me!」が誕生する過程まで遠回りにはなったが、μ’sはメンバーが知恵を出し合うことで、よりメンバー間の絆を深めることができた。「ハッピーハロウィーン」は、いわば「1人でしない」そのものなのである。

 

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 最後に、『ラブライブ!The School Idol Movie』にも触れておきたい。同作では、μ’sはアメリカ・ニューヨークにてライブを披露。しかし、ライブ前夜に穂乃果がメンバーとはぐれ、ニューヨークの街を彷徨うことに。そんなとき、穂乃果は1人の日本人女性シンガーに出会う。彼女は日本で友人たちと音楽活動をしていたが、最後には解散してたことを明かす。μ’sも3年生の卒業を控え、その一方でラブライブ!のために活動を続けるかを悩む状況で、彼女は解散の際に何を考えたのかと穂乃果は問う。女性シンガーは、その答えは“簡単”なものだったことだけを告げ、穂乃果の前から姿を消す。帰国後、穂乃果をはじめとするメンバーはμ’sが国内で爆発的人気を巻き起こしていることを知り、“μ’sをやめないでほしい”という声を受ける。スクールアイドルとして最後まで生きるか、μ’sを続けるのかを悩んだとき、穂乃果は女性シンガーに再会。そこで彼女とともに見たのは、まだ自分が幼かった頃、無邪気に公園の水たまりを飛び越えようとしていた姿。それを見て、あの頃と変わらない”ただ楽しい”スクールアイドル活動に夢中な自分に気付く。スクールアイドルとして輝くこと(=その瞬間を全力で楽しむこと)を選んだとき、穂乃果は「いつだって飛べる」と呟くのだった。『ラブライブ!』において、“飛ぶ”という行為は“輝くこと”と同義であり、その全てはアイドル活動における楽しさから生まれるものだった。つまり、μ’sの音楽活動は“飛ぶ(=FLY)ことなのである。これは<FLY BOY RECORDS>でも同様であり、ラッパーとして成功し大金を得ること、そして音楽を楽しむことは『ラブライブ!』における“飛ぶ”という行為そのものなのだ。KOWICHIとYoung Hastle、そして<FLY BOY RECORDS>は、“飛んで”おり。それは<FLY BOY RECORDS>というレーベルタイトルを見れば明らかだろう。<FLY BOY RECORDS>の音楽活動は、まさにμ’sと同じ輝きを持っているのであり、彼らもまた「SUNNY DAY SONG」を披露したスクールアイドルの一員なのである。<すごいのはA-RISEやμ’sだけじゃない>、<FLY BOY RECORDS>もまたスゴいレーベルなのだ。

 

 『ラブライブ!』シリーズより、静岡県沼津市を舞台に少女たちの成長を描く『ラブライブ!サンシャイン!!』も、第2期がもうまもなく幕を閉じる。彼女たちの物語が終わるとき、スクールアイドルであるAqoursは何を掴むのか。Aqoursの物語の行く末に想いを巡らすとき、<FLY BOY RECORDS>の楽曲が何かヒントを与えてくれるだろう。今後さらなる輝きを放つであろう、Aqoursと<FLY BOY RECORDS>の背中を温かく見守っていきたい。