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KANDYTOWNと豊田萌絵さんのご活躍をお祈りしております

KEIJU as YOUNG JUJUが歌う、現代都市生活における“孤独” 最新作「Right Now」を踏まえ考察

 <I know, I know, you don’t wanna be alone>………現代の都市生活は、便利で、満たされていて、そしてどこか孤独だ。

 

 DJ CHARI & DJTATSUKIが、ヒップホップクルー・KANDYTOWNよりKEIJU as YOUNG JUJU、BAD HOPよりYZERRを迎えてリリースした新曲「Right Now」。同曲は、今年1月に<ソニー・ミュージックレーベルズ>とのメジャーディールを締結したKEIJUにとって、貴重な一作となった。これは、同曲がメジャーアーティストとして参加した第1作だからという陳腐な理由ではなく、彼が2017年に築き上げたひとつの“都市論”が、そこに内包されているからだ。

Right Now (feat. KEIJU & YZERR)

Right Now (feat. KEIJU & YZERR)

  • DJ CHARI & DJ TATSUKI
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 KEIJU(当時の名義はYOUNG JUJU)は、昨年5月にtofubeatsが発売したアルバム『FANTASY CLUB』にて、収録曲「LONELY NIGHTS」に客演参加。同曲は、昨年リリースされた国内ヒップホップにおいてアンセムと評され、瞬く間にYOUNG JUJUの名を世に広める契機となった。『FANTASY CLUB』は、この時代における「分からなさ」をストレートに表すことをテーマとした、自己内省的でパーソナルな作品だ。そんな同アルバムの制作時、tofubeatsは若手ラッパーを客演に迎えた楽曲を設ける意向を示し、彼と同じく<ワーナーミュージック・ジャパン>に所属、当時クルーの名前を冠したメジャー1stアルバムをリリースしていたKANDYTOWNの一作品と出会う。これが、同アルバム『KANDYTOWN』には収録されず、彼らのフリーライブにて後に配布となった「Song in Blue Remix」だ。同リミックス曲に参加したYOUNG JUJUは、自身のヴァースでオートチューンを使用し、凛とした歌とフロウの狭間を漂うような声に、tofubeatsを含む多くのリスナーが魅了された。これが決め手となり、tofubeatsはYOUNG JUJUを自身の作品へと招待したという。また、同曲のリリックに目を向けると、<やりたい放題 君はもういない>や<あの時 俺はなぜ let you go>など、恋人との別れが歌われており、歌い手の“孤独”な姿が思い描かれる。

 

 そして「LONELY NIGHTS」でも、YOUNG JUJUはオートチューンを用い、憂いもありつつ、とてもエモーショナルなヴァースを披露。冒頭で紹介した<I know, I know, you don’t wanna be alone, yeah>というリリックのように、『FANTASY CLUB』の世界観に寄り添い、満たされながらもどこか“孤独”を感じる、都市生活で微かに感じる寂しさを歌った。スマートフォンで世界中の誰とでも繋がれる現代でも、やはり一人の時間はやってくるのだ。

 

 さらに「Right Now」には、KEIJU as YOUNG JUJUとして客演参加。BAD HOPにおいて作品のディレクションを担当し、「Ocean View」や「Life Style」などで見事なまでにオートチューンを使いこなしたYZERRとともに、作品に華を添えている。同曲では、KANDYTOWNの作品では多く見ないオートチューンを使用することで、ソロアーティストとしてのオリジナリティを確立し、同時にメロディを歌うこともできるシンガーとしてのポテンシャルも感じられた。そんな「Right Now」のリリックは、別れ際の恋人への想いが<訳もなくまた I miss you>などのリリックでストレートに歌われており、フックでは<Baby, I don’t wanna be alone>とも歌唱。オートチューンの使用を始め、「LONELY NIGHTS」では<you>(=君)だった主語が、<I>(=俺)に置き換わっており、同曲へのアンサーソングとも受け取れる。まさに現代を生きる若者(=シティボーイ)であるKEIJUが、“孤独”になることへの不安を歌うからこそ、このテーマがよりリアルなものとして響くのだろう。現代の都市生活を考える上で、“孤独”という要素は切っても切れないのだと、tofubeatsやKEIJUは音楽を通して伝えているのかもしれない。

 

 そんなKEIJUは、1月28日に初の主催イベント『KEIJU as YOUNG JUJU Presents”7 Seconds”Supported by PIGALLE』を開催し、今後はメジャーシングルをリリースするとのこと。tofubeatsも、TVドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』(テレビ東京)に主題歌「ふめつのこころ」を書き下ろしたほか、同ドラマの劇伴も担当。今後さらに活躍の場を広げるであろう2人が、2018年には何を歌うのか。そこには、今を生きる上でのアンサーとなる鍵が隠されているのかもしれない。

内田彩、夏川椎菜、水瀬いのり、Aqours……2017年を彩ったアニメ / 声優アーティスト楽曲12選

 2017年のアニメ音楽シーンのアンセムは「ようこそジャパリパークへ」だろう。同作は、TVアニメ『けものフレンズ』主題歌として瞬く間にミームとなり、先日は『FNS歌謡祭 第二夜』(フジテレビ系)にて、長濱ねるをはじめとする欅坂46のメンバー4名とのコラボパフォーマンスも披露された。

 そんな『けものフレンズ』には「フレンズによって得意なことは違うから」という、各“フレンズ”の得手不得手や多様性を受容する印象的なセリフが存在する。今年のアニメ / 声優音楽シーンにおいても、一見すると『けものフレンズ』一色に思われがちだが、間違いなく様々な特色の見られる楽曲が揃っている。本稿では、アニメ / 声優アーティストによる作品を全11曲紹介するとともに、私個人の感情を語るのではなく(選定は完全に趣味一色なのだが)、その作品が2017年のアニメ / 声優音楽シーンでどのような立ち位置にあるのか、J-POPをはじめとする他ジャンルの作品とはどのような関係性なのか、延いては今後の音楽シーンにどのような影響を与えるのかを綴っていきたい。

 

Aqours「“MY LIST” to you!」

作詞:畑 亜貴 作曲:原 知也 編曲:ラムシーニ

 2017年は待望の1stライブ『ラブライブ! サンシャイン!! Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~』の開催を皮切りに、3rdシングル『HAPPY PARTY TRAIN』のリリース、同シングルを携えた全国3都市を巡る『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 2nd LoveLive! HAPPY PARTY TRAIN TOUR』を開催。さらに、初のファンミーティングツアー『ラブライブ!サンシャイン!!Aqours クラブ活動 LIVE & FAN MEETING 〜 Landing action Yeah!! 〜』の開催や、先日終了したTVアニメ第2期の放送と同時発表となった劇場版の制作決定など、目白押しなイベントだらけだったAqours。そんな同グループにおける今年のリリースで、間違いなく光ったのが2期エンディング主題歌シングル収録の「“MY LIST” to you!」だろう。

 同作は、これまでの『ラブライブ!』シリーズの楽曲にはなかった、ドゥーワップコーラスを取り入れた楽曲だ。声優だからこそ表現できる甘い歌声が特徴的な同曲は、数多くの表情を演じてきた今のAqoursだからこそ“表現”として成立するのだろう。音数が少ないにも関わらず、これまでリリースされた「夜空はなんでも知ってるの?」をはじめとするバラード楽曲とは音楽的に一線を画しており、素直にAqoursの歌声を楽しめる“声優特化”ともいえる、聞いていて笑顔のこぼれる作品だ。

 また、畑亜貴が作詞を務めた歌詞は、これから出会う最愛の人へ自分を知っていてほしいといった内容で、<名前で呼んでよね 「さん」とか付けないで呼んでね 手つないで歩いて 人目気にしちゃやだよ>や<忙しいって連発しないで 大好きなキモチ 後回しされちゃったら涙でちゃうよ>といった歌詞が特徴的だ。自身のキモチを直接的な形で打ち明けない姿勢は、西野カナ「トリセツ」に通ずるような2017年の恋愛モデルに合わせてきたのだろう。なお筆者は、小宮有紗演じる黒澤ダイヤの<いつか出会う恋人よあきれないでね "MY LOVE" 出会いはどこ?>という部分が大好きだ。

 「“MY LIST” to you!」以外にも、同プロジェクト内のユニットであるAZALEAがリリースした「GALAXY HidE and SeeK」や、前述のシングル『HAPPY PARTY TRAIN』収録の全員曲「少女以上の恋がしたい」など、今回紹介できなかった良曲も多く存在する。4月に開催される『ラブライブ!』プロジェクト初のユニットライブや、今後公開が予定されている劇場版主題歌に果たしてヒットメイカー 倉内達矢が起用されるかなど、楽しみなことがたくさんある。アニメ音楽シーンで躍進を続けるAqoursの活動は、今からでも要チェックだ。

 

fhána「青空のラプソディ

作詞:林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

ようこそジャパリパークへ」に続く、2017年の裏アンセム。ソウル〜ポップス〜ディスコサウンドを織り交ぜた同作は、リスナーに今年最大の多幸感を味あわせたことだろう。ダンサブルでキャッチーなサウンドにfhánaらしさが溢れているのだが、何よりも言及すべきはtowna(Vo.)とトラックにおける親和性の高さだろう。towanaの歌声は非常にキーが高く、声優の持つ地声や歌声とは微妙につくりの違うものだ。そんな彼女の歌声を巧みなまでに楽曲へと組み込んできたのが佐藤純一(Key)の手腕なのだが、「青空のラプソディ」ではさらにその昇華レベルが上がったと見られる。特に、サビのメロディには2017年のどの作品にも見られないの爽快感と開放感があり、リスナーも思わず口ずさんでしまうことだろう。

 また、MVの舞台はメイドカフェとなっている。これは、実際にfhánaがメイドカフェで結成されたバンドであることに由来しており、同作がTVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』主題歌ということもあるのだろう。メンバー全員がダンスをする、キャッチーな映像に仕上がっている。

 毎クール欠かすことなくアニメ主題歌を担当しているfhána。まさしく、“アニソン”アーティストとしての献身ぶりと、作品における完成度の高さには2018年も期待できる。

 

三森すずこ「恋はイリュージョン」

作詞:三森すずこ 作編曲:矢野博康

 Cymbals 矢野博康×三森すずこのタッグ作。筆者の「この人がクレジットに載っている曲はヤバい」リストにも名を連ねる矢野。そんな矢野の新作「恋はイリュージョン」は、花澤香菜「We Are So in Love」などと同じポスト渋谷系路線の楽曲で、三森の作品を手掛けるのは1stアルバム『好きっ』収録曲「恋のキモチは5%」以来となる。近年確かな人気を誇る、渋谷系×アキバ系の”シブアキ系”要素が詰め込まれたソウル〜ジャズ楽曲だ。サックスをはじめとするブラス隊のサウンドが最高な同曲だが、それを上手く扱う三森の落ち着いた歌声も素晴らしい。アーティストとしてのキャリアが厚い三森だからこそなせる技だろう。

 また、MVの完成度も過去に類を見ず、非常にオシャレな一作だ。ビビッドなイエローのニットの上に羽織ったパステルのコート、楽曲のイメージを引き出す南フランス〜北スイス風の街並みのセット。三森が街ゆくなかで出会った人々(=ダンサー)にアプローチし、サビではその全員が踊り出すという、2016年最大のヒット映画『ラ・ラ・ランド』の文脈を踏襲するかのような、ミュージカル的な一面にも驚かされる。音楽と映像の両方面で高い完成度を見せられるのは、やはりこれまでエンターテイメント性の高いアーティスト活動やステージをこなしてきた三森だからこそできるものだろう。2018年も、三森からは目が離せなそうだ。

 

Trysailadrenaline!!!

作詞 / 作編曲:中野領太(onetrap)

 今年Trysailがリリースした名盤『TAILWIND』より、TVアニメ『エロマンガ先生』主題歌にも起用された収録曲「adrenaline!!!」は、軽快なスカコアサウンドのアッパーなナンバー。作曲は、今年JUJU「いいわけ」などを担当した、Onetrap所属の中野領太。裏拍で鳴るギターや、ホーンスウィングなどの爽快感あるサウンドのほか、盛り上がり重視のコール&レスポンスも楽しい一曲だ。MVでは、海軍服を着用したり、オモチャのトランペットを使ってみたりと見応え満点である。

 Trysailは今年、同ユニットでは過去最高規模のライブ『LAWSON presents TrySail Live 2017 Harbor × Arena』を開催したほか、メンバーの雨宮天麻倉ももに続き、夏川椎菜が遂にソロアーティスト活動を開始。なかでも、夏川のソロ楽曲はEDMの流れを吸収した楽曲も見られ、音楽的にもレベルの高い作品展開を行なっている。メンバー個人としても、ユニットとしても成長を重ねた2017年のTrysail。2018年も新たな船出が見られることに期待したい。



夏川椎菜「gravity」

作詞:深川琴美 作編曲:Kon-K

 前述の夏川椎菜のソロアーティスト活動初シングル『グレープフルーツムーン』より、カップリング曲「gravity」は、ガールズロックにダンスミュージックの要素を織り交ぜた快作。ギターカッティングが非常に光る、聴き心地の良い四つ打ちナンバーだ。少年少女が仲良く惹かれ合う様子を“引力(=gravity)”に例えた作品で、<疲れすぎてバグる脳みそ><ミクロ マクロ もっと知りたい エクボのあな 君というグラビテーション>という歌詞も幼さを感じられ大変可愛らしい(しかもちゃっかり韻を踏んでいる)。一方、トラックでは要所要所でスクリューなどのダンスミュージック的なエフェクトが見られたり、エッジの効いたキックに驚かされたりと、しっかりとしたダンスナンバーに仕上がっている。

 同曲以外にも、夏川のリリース作品はTrysailメンバーのなかで一番完成度が高いと言っても過言ではなく、2018年の展開にも期待できる。今回紹介した「gravity」以外にも、2017年カワイイEDM代表曲「フワリ、コロリ、カラン、コロン」など必聴のナンバーがあるほか、夏川がシングルタイトル『グレープフルーツムーン』の月になぞらえた、1枚のレコードを持っているジャケットも非常に素晴らしい。夏川の髪色も、アーティスト活動の輝きとともに明るくなっていくことだろう。 

gravity

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大橋彩香ワガママMIRROR HEART

作詞:真崎エリカ 作曲:加藤裕介 編曲:酒井拓也(ArteRefact)

 TVアニメ『政宗くんのリベンジ』主題歌。とにかく疾走感のあるドラムが、楽曲全体を通して冴え渡る一曲。アニソンに多く見られるキメの多さがありながら、近年のダンスミュージックに見られるドラムパターンの流れを汲んでいる。<だから強制!>以降のサビが2構成になっているなど、プログレッシブな姿勢も感じられる。楽曲として非常に大振りながらも、2サビではサビを1段構成にして間奏に入り、大サビで再び2段構成に戻すという、聞き手を飽きさせない手法や、大サビでこれまで用いらなかったブレイクを取り入れるなど、細かいギミックも見られる作り込まれた作品だ。

 トラックの力強さがある分、歌唱する大橋にもレベルの高い技術が要求され、レコーディングが非常に難しかったとインタビューにおいて語っている。しかしながら、この曲を歌いきったことで、自身のアーティストとしての能力を知らしめたともいえるだろう。

  

花澤香菜「滞空時間」

作詞 / 作編曲:宮川弾

 2017年にリリースされた声優アーティスト作品のなかで、とりわけ評価の高いアルバム『Oppotunity』。前作『Blue Avenue』ではアメリカ・ニューヨークをテーマとした一方、今作ではUKロックをテーマにしており、豪華クリエイター陣が揃った珠玉の一枚に仕上がっている。同作に関し、音楽情報サイト「音楽ナタリー」内のインタビューにて<ひと口にUKと言っても、いろんなアーティストがいて、いろんな表現の仕方があるので。できあがったアルバムも、ひと言では表せない、いろんな刺激のある作品になったなと思います。>と語っている(参考:花澤香菜「Opportunity」インタビュー (1/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー)。

 そんな同作より、「滞空時間」をピックアップ。同曲は、良い意味でチープなシンセ音が特徴的なエレクトロ〜ニューウェーブ楽曲で、アルバム収録曲でも異なった雰囲気を纏っている。「滞空時間」というタイトルのとおり、浮遊感のある花澤のボーカルが特徴的で、ポジティブな意味でつかみどころのない、落ち着きのある一曲だ。また、懐かしさの感じられるサウンドながら、その一方でBメロ〜サビのブリッジに2017年らしさが担保されているほか、2サビ後にはモールス信号による「好き」というメッセージが隠されているなど、宮川弾の遊びごころも込められている。2017年の数少ないエレクトロ〜ニューウェーブ楽曲として紹介した。

 余談だが、<ベイビーベイビー 見つめてよ one more time>という歌詞で、筆者はJustin Bieber「Baby」をイメージした。厳密には、Justin Bieberの方で歌われている“Baby”は、“赤ん坊”という意味なのだが、同じフレーズでも日本人の花澤が歌うことにより、一気に少女性に由来するような温かみを感じてしまう。あわせて、2017年リリースではないものの、「滞空時間」と同じくニューウェーブサウンドが特徴の楽曲である村川梨衣Baby, My First Kiss」と4to6(Pile / 飯田里穂)「Yume-Yume-Wai-Wai ROOM」も聞いていただきたい。

 

宮野真守「恋されガール」

作詞:marhy 作曲:FURUTA / サイトウ リョースケ 編曲:サイトウ リョースケ

 声優アーティストである宮野真守の特徴は、トレンドをキャッチする早さにある。星野源「恋」やSuchmos「STAY TUNE」、さらにはBruno Mars「24K Magic」を機に、ブラックミュージックが本格的に国内ポップスへと浸透した。今年11月には、向井太一がメジャーデビューアルバム『Blue』をリリースし、早耳リスナーを驚かせたのも記憶に新しい。

 ブラックミュージックの波は、声優音楽シーンにも影響を及ぼし、その流れを巧みに昇華したのが宮野が今年リリースしたアルバム『THE LOVE』だ。なかでも、収録曲「恋されガール」は、Bメロの譜割りとメロディが気持ちよく、日本語詞と英語詞が上手く織り交ぜられており、ギターのサウンドも心地いい。大サビの<So you are super lovely more than you would think>という部分では、歌唱の際に外国語話者の発音を意識した、口を大きく使う発声方法を用いていると考えられる点も評価できる。

 あわせて、今回のアルバムタイトルが『THE LOVE』ということで、恋愛を歌った歌詞にも言及したい。星野源「恋」をはじめとする楽曲との共通点として、歌詞が非常に身近な内容を歌っていることも、近年のトレンドかもしれない。「恋」において、星野はパートナーとの生活における普遍性を歌っているが、宮野は同曲において、実際にありそうなパターンの恋愛を歌っている。

 音楽情報サイト「OKMusic」でのインタビューにおいて、宮野は<今作のコンセプトに合うように、未来の恋人たちのロマンチックなデート風景という世界観を構築して、そういった歌詞をAmon(Hayashi)さんに付けていただきました。もう1曲デモから選んだのが「恋されガール」。こっちは曲のかわいらしさの中に物語が引き立つような歌詞がいいなぁと、少女マンガのような世界観を提案させてもらって。クラスでは目立たない子を好きになって、周りから“なんであの娘なの?”って言われても、自分は彼女の素敵なところを知っているんだ!というような、愛の芽生えみたいなところをmarhyさんに表現してもらいました。>と語っている(参考:【宮野真守】ファンのみなさんや仲間からもらった“愛”への感謝 | OKMusic)。

 サウンドだけでなく、歌詞においてもトレンドを追求する宮野。2018年リリースの際は、是非ともディスコナンバーなどを詰め込んだアルバムを制作していただきたい。

恋されガール

恋されガール

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every♥ing!「ちゅるちゅるちゅちゅちゅ」

作詞作曲:IMAKISASA(Wee's Inc.)編曲:小川裕太郎(Wee's Inc.) 

 2017年は、every♥ing!にとって激動の1年だった。活動史上初のアルバム『Colorful Shining Dream First Date♥』のリリースにはじまり、20歳を迎える山崎エリイ木戸衣吹のevery♥ing!からの「卒業」発表、卒業旅行ツアー『every♥ing! Graduation Trip with Y♡U!!』、そして11月26日に中野サンプラザでの卒業公演『every♥ing! Final Fantasia-Show 2017 〜Lesson3 輝く未来へ〜』の開催まで、目を離せないひと時だった。

 そんな2017年に発表された同アルバムの表題曲が「ちゅるちゅるちゅちゅちゅ」である。同曲は、これまでのシングル曲「カラフルストーリー」や「Shining Sky」とはかわり、モータウンビート調の落ち着いた作品だ。小洒落たミドルテンポのベースラインに、いじらしい恋を表現する山崎と木戸の少し幼い歌声がのったポップな楽曲に仕上がっている。

 楽曲としての完成度、<ちゅるちゅるちゅちゅちゅ>と声に出したくなるような歌詞、MVの成長した山崎と木戸の可愛らしさ、そして真似したくなるような振り付けで数多くのリスナーを魅了した。たしかにevery♥ing!は活動を終えてしまったのだが、そんなキャリア最後の年に、このような楽曲を残してくれたことは、彼女たちの“紡いだ物語”が素敵なものだったことをいつまでも思い出させてくれることだろう。貴重な10代の時間をevery♥ing!に捧げてくれたことに、深い感謝を送りたい。

 

水瀬いのりReady Steady Go!

作詞:藤林聖子 作編曲:藤永龍太郎(ElementsGarden)

 2017年、声優アーティストとしてもっとも大成したのが、水瀬いのりだ。2015年12月に1stシングル『夢のつぼみ』でデビューを果たし、その後『リスアニ!LIVE 2017』や『Animelo Summer Live 2017 -THE CARD-』などの大型アニソンフェスにも参加。確実にアーティストとしての変貌を遂げた水瀬だったが、ひとつだけその大成に欠けていた要素があった。それは、ワンマンライブだった。

 そんな水瀬は、今年4月に1stアルバム『Innocent flower』をリリース。さらに、自身の誕生日でありアーティストデビューを果たした日でもある12月2日に東京国際フォーラムホールAにて、『水瀬いのり 1st LIVE Ready Steady Go!』を開催した。そして、同公演のタイトルを冠した5枚目のシングル表題曲が「Ready Steady Go! 」である。まさに、水瀬のアーティスト活動の本当のスタートを歌ったかのようなタイトルで、水瀬の声優アーティストとしての勢いを表現したかのような、疾走感のあるアッパーなロックサウンドに仕上がっている。

 また、2年間のアーティスト活動を経て、さらにパワフルに仕上がった歌声は、後ろで鳴るギターサウンドにも負けず、他の声優アーティストのそれとは一線を画するまでに至る。さらに、水瀬は地声に近いキーとファルセットのどちらにも柔軟に対応できるアーティストなのだが、サビのメロディはその両方の良さを存分に表すことのできる構成となっている。ライブ開催のタイミングでリリースされたこともあり、曲中のロックテイストなコール&レスポンスも楽しい、今後のアーティスト活動を担っていく一曲となることだろう。

 

内田彩「Yellow Sweet」

作詞:hisakuni 作編曲:hisakuni

 2017年の声優音楽シーンを語る上で、今年9月にリリースされた内田彩の3rdアルバム『ICECREAM GIRL』だけは外すことができない。同アルバムは、間違いなく今年のマスターピースであり、今後の声優音楽シーン、延いてはJ-POPへも影響を及ぼす一枚だ。

 その素晴らしさは、1stアルバム『アップルミント』リリース時より変わらない、内田彩、制作スタッフの工藤智美と井上哲也による自由かつ綿密な制作スタイルと、内田のアーティストとしての器用さにある。同アルバムにおいても、今年のトレンドともいえるミドルテンポなR&Bの「Close to you」を優しく歌い上げると思えば、シンフォニックなロックチューン「EARNEST WISH」を歌いこなし、50’sなピアノロックでBen Folds Fiveを想起させる「Holiday」があると思えば、声優フューチャーベースの最高峰である、今作のキラーチューン「Yellow Sweet」も存在する。内田が2016年8月に開催した武道館公演の名を借りれば、まさに色とりどりな1枚を毎度のごとくリリースするのだ。

 声優アーティストによる音楽活動の良さは、ひとつの音楽ジャンルに縛られることのない自由な表現にあるのだが、内田のそれは他のアーティストと比べるとはるかにずば抜けている。音楽情報サイト「Real Sound」内の記事では、『ICECREAM GIRL』で取り扱っている音楽ジャンルの豊富さは、<「もしかしたらJポップにはこういう感じの未来があったのかもしれない」という気分になる>と語られているほどである(参考:内田彩、チャートアクション好調の意義 声優アーティストの存在感さらに高まるか?)。

 そんな「Yellow Sweet」は、2ndアルバム『Blooming!』収録の「with you」にはじまる、内田×hisakuni(SUPALOVE)タッグの第5作で(うち一作は『Bitter Kiss』収録の「絶望アンバランス」)、内田のアーティスト活動を語る上で欠かすことのできない“フューチャーベース”サウンドを取り入れた楽曲だ。

 同作は、煌びやかなシンセ音とメロディーラインが独特な太いベースサウンドのうねりが特徴な一曲。なかでも、Dメロでのシンコペーションではトラックが変拍子となる一方、大サビ前ではキーボードとハイハットを用いたメロディで落ち着きを見せる、緩急のついたサウンドに仕上がっている。BPMが前作「Everlasting Parade」の128から113まで落とされ、サウンドとしても新たな試みが見られる今作だが、歌詞においてもその変化は見られる。これまでとは異なり、「Yellow Sweet」では内田自身の年齢に近い20〜30代の女性に焦点が当てられており、少々大胆な行動に走る一面も。

 初のフルアルバムのリードトラックとなり、歌詞とサウンドの両側面で新境地へと辿り着いた内田×hisakuniタッグの「Yellow Sweet」。本稿を機に、是非とも耳にして2017年の総まとめとしていただきたい。

 

内田彩「Close to you」

作詞作曲:金子麻友美 編曲:佐藤清喜

 最後に紹介するのは、同じく『ICECREAM GIRL』収録曲である「Close to you」。「Yellow Sweet」と同じく、他のコンペで選ばれた楽曲とは別に、アルバムでも決め打ち曲として制作され、もっともレコーディングに時間が掛かったと語られている。

 そんな同曲は、内田のアーティストとしての真価を問う、ミドルテンポなR&B。アーバン〜メロウなメロディーに、ホーンのサウンドが乗った心地よい一曲で、Suchmos「STAY TUNE」などがリリースされた2016年以降の音楽シーンへのひとつのアンサーソングとも捉えられる。落ち着いたサウンドからは、アニメ / 声優音楽特有の“らしさ”を感じることはなく、まさしくアーティストとして歌うにふさわしい作品だ。

 “永遠の愛”が描かれた歌詞に、当初の内田は大人っぽく歌うなどの趣向を凝らしたそうだが、最終的には、30歳を迎えた等身大の内田彩として歌うことで、一番曲の持つイメージを形にできたとのこと。まさしく、2017年の総まとめ的な楽曲であり、毎年のことではあるが、内田のアーティスト活動における今後の展望がさらに楽しみになった一曲だった。

 

 本年も大きな盛り上がりを見せたアニメ / 声優音楽シーンだが、個人的にはソウル、ジャズ、ファンクなどのサウンドを聞く機会が多かった気がする。本稿を機に、同シーンの大きな流れを感じていただければありがたい。個人的な反省として、アニメ主題歌やキャラクターソングを聞く機会が設けられなかったことが挙げられる。来年こそは『温泉むすめ』や『ウマ娘』の作品、延いてはJ-POPや日本語ラップK-POPや海外音楽シーンにも目を向けたいと強く思う。そんな思いを抱きつつ、まずは今年アーティスト活動にピリオドを打ったevery♥ing!やRayに敬意を評したい。そして最後に、筆者が先日まとめた2017年のJ-POP(一部声優音楽や洋楽も…)年間ベスト一覧を添えつつ、2018年に出会うことのできる音楽作品へと臨みたい。

 

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(上段左より)

ポルカドットスティングレイ『全知全能』

Special Favorite Music『Royal Blue』

三浦大知『HIT』

向井太一『Blue』

内田彩『ICECREAM GIRL』

tofubeats『FANTASY CLUB』(一番聴いた)

花澤香菜『Oppotunity』

every♥ing!『Colorful Shining Dream First Date♥』

w-inds.『INVISIBLE』

SALU『INDIGO』

欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』

Brasstracks『For Those Who Know, Pt.1』

南條愛乃、実直なアーティスト活動の集大成 5周年記念ライブで見せたデビュー作『カタルモア』の完成図とは?

 南條愛乃が12月25日にパシフィコ横浜国立大ホールで開催した『南條愛乃 5th Anniversary Live -catalmoa-』は、彼女のこれまでのアーティスト活動を総括する一夜だった。同公演では、南條の5年間に及ぶアーティスト活動の完成形を見るとともに、その中心には2012年12月に発売されたデビューミニアルバム『カタルモア』があることを再認した。当日のセットリストは『カタルモア』と、今年11月まで開催された『Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>』にて惜しくも披露されなかった楽曲を中心に構成。クリスマスの夜にふさわしい南條からの歌のプレゼントを、ファンは朗らかな笑顔とともに受けとった。

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出典:声優:「南條愛乃」ワンマンライブ「Yoshino Nanjo 1st LIVE TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???」レポート | 声優|アニメ情報とショップ&コミュニティ -プレセペ-  

 そんな同公演は、南條の歩みを辿るべく『カタルモア』のスタートナンバーである「blue」によって幕開けとなった。5周年ライブにふさわしい見事な選曲だ。続けて、1stフルアルバム『東京1/3650日』より「believe in myself」、『カタルモア』収録のキラーチューン「飛ぶサカナ」で会場を盛り上げたのち「Precious time」を披露。「飛ぶサカナ」はライブでもたびたび披露されるが、5年前に開催された『カタルモア』リリース記念インストアライブと比べ、南條のアーティストとしての成長と余裕を、彼女の伸びるような歌声から感じることができた。

 

 続いて披露された「0 -未来-」「今日もいい天気だよ」は、2ndフルアルバム『Nのハコ』を携えたツアーの終盤にて歌唱された楽曲。自身のブログタイトルと同名の「今日もいい天気だよ」を改めて聞くことで、デビュー当時からの変わらない南條のファンと向かい合う姿勢を感じられた。また、アコースティックギターの柔らかな音色が南條のハイトーンボイスと混ざり合う同曲は、最後に<晴れの日だけじゃない毎日も「いい天気だな」って思うんだよ。 急に不思議なこと話したね。だけど、ずっと前から思ってた。>というフレーズをリフレインすることで、南條の優しい人柄が楽曲に寄り添っているような印象を抱いた。このブロックでは「Garbera」が締めの曲を担い、続くアニメタイアップ楽曲コーナーへと繋げられた。

 

 続いて南條は「君が笑む夕暮れ」「あなたの愛した世界」「黄昏のスタアライト」を立て続けに披露。「君が笑む夕暮れ」は、1stシングルということで特に思い入れのある作品であり、初回のレコーディングの際には緊張ゆえに上手く歌い切れなかったとのこと。後日、声優をクビになる覚悟で再レコーディングを依頼した際、あっさり快諾され拍子抜けしたというエピソードも語られた。

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出典:南條愛乃が創る“私の見え方” 声優として、アーティストとして、活躍を続ける彼女がパシフィコ横浜で見せたパフォーマンスとは | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

 バンドセッションを挟み、次に披露されたのは事前に南條のファンクラブである「ごきんじょるの 友の会」にてアンケートが取られた、今回のライブで聞きたい楽曲トップ3だ。これらの楽曲は、その大半を南條も披露しようと事前に思っていたことが、後ほどのMCで明らかにされた。そんなアンケートで選ばれたのは、出演作『ラブライブ!』で自身が演じたキャラクターである絢瀬絵里を想いながら南條が作詞した「Simple feelings」、『Nのハコ』収録のポップチューン「idc」、そしてファンの間でも人気の「リトル・メモリー」だ。「idc」では、<bad girl? idc!>というフレーズが「祝!5周年!」とアレンジを施され、南條の遊び心が詰まったダンスパフォーマンスも披露された。また、自身の実家でのエピソードをモチーフとしたセンチメンタルなポップス「リトル・メモリー」では、間奏でまさかのプレゼント配布を開始。サンタとトナカイに扮したダンサーが客席に登場し、チロルチョコを配り歩いた。一方、その間を南條がMCで繋ぐという小粋な演出も。これらのサプライズは、南條の5年間のキャリアから生まれる余裕ゆえなのだろう。このほかにも、同日のライブではとにかく南條のMCが光り、2012年に開催された自身初のバースデーライブ『南條愛乃 Birthday Eve acoustic live event 』の時とは人が変わったかのような饒舌さに、経験とは恐ろしいものだと感じさせられた。そんなサプライズの後に披露されたのは、中島美嘉雪の華」のカバーだ。続けて、同じく冬を題材とし、今回のライブのために制作したと語る「白い季節の約束」を歌唱。あわせて、南條の楽曲でも特にメッセージ性の強い「優しくつもる言葉の花」「+1day」の2曲も披露された。 

 

 ライブ終盤に差し掛かり、「ここまであっという間だったでしょ!」とMCを挟んだ後、南條が作詞を担当し、人との繋がりの多様性を描いた「ゼロイチキセキ」、南條の代表曲であるアップテンポな「きみを探しに」が披露された。もはやライブではお決まりとなった<愛してる>というフレーズのシンガロングが横浜の夜に響き渡り、本編は終了した。

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出典:南條愛乃ライブ・ツアー“Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>”ファイナル公演レポート – リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

 アンコールでは、3rdフルアルバム『サントロワ∴』より「スキップトラベル」「・R・i・n・g・」を披露。さらに、ダブルアンコールも行われ、今回のライブタイトルにもなっている「カタルモア」が遂に披露された。同曲を歌唱する際、南條は自身のアーティスト活動への想いを吐露。「ファンの日常に溶け込むような楽曲を制作してきた。それぞれが変化していく生活のなかで、その一瞬を共有できたら嬉しい」という旨を南條は語った。「リトル・メモリー」曲中のMCでも感じられたが、南條のライブはとにかくファンとステージ間の雰囲気が独特だ。例えるならば「ご近所」や「親戚」という表現が似つかわしく、それはまさに『カタルモア』リリース時に南條が目指していた、ファンとの関係性そのものなのだ。南條は続けて「5年越しに『カタルモア』のライブをようやく行うことができた」と、これまでの歩みを噛みしめるかのように語ってくれた。同公演は、とにかく実直な道を歩む南條のアーティスト活動の大きな成果なのだろう。最後に、最新曲「光のはじまり」を披露し、南條の過去と現在、そして未来を繋いだこの日のステージに幕が下りた。 

 

 南條は、デビュー作である『カタルモア』を5年掛けてようやく完成させた。シンガーとしての成長、バンドメンバーとの強い信頼、ファンとのあたたかなひととき。その全てが、南條によるアーティスト活動の実直さにあるのだろう。「ファンの帰ってくる場所として、アーティスト活動が続けられればいい」と語る姿は、『カタルモア』リリース時と変わらない南條のままであった。リリース当時、アルバムを再生した際、開始30秒が街の雑踏にまぎれてしまい「このCD、まさか何も録音されてないのか…」と思ったこと、リリースイベント時に「アーティスト活動をはじめたばかりだから、みんなでノリ方を見つけていこう」と語った南條の笑顔。南條のアーティスト活動のひとつの節目とともに、筆者の2012年からの想いが、ようやくひとつの終着点に辿り着いた気がする。南條は今後、どのようなアーティスト活動を展開していくのか。きっと今後も変わることはないのだろう。そんな南條愛乃との毎日は、本当に楽しいものだ。

『ラブライブ!』は「1人でしない」物語 <FLY BOY RECORDS>とμ'sの関連性をアーティストとしての姿勢より探る

  KOWICHIが、12月13日に5枚目となるオリジナルアルバム『SPLASH』をリリース。同アルバムより、リードトラック「Day Ones feat. T-Pablow & DJ TY-KOH」のMVを公開した。

 

KOWICHI「Day Ones feat. T-Pablow & DJ TY-KOH」MV

 

 KOWICHIは、ヒップホップレーベル<FLY BOY RECORDS>を主宰する、神奈川県川崎市多摩区在住のMC。KOWICHIのリリックは、同レーベルのクルーやこれまでの人生、さらには男性心理などを、実際の出来事に忠実かつ巧みに表現する。「Day Ones」には、盟友・DJ TY-KOHのほか、同じく川崎区池上町を代表する9人組クルーBAD HOPより、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)で一躍その名を知らしめたMCのT-Pablowを客演に迎えている。KOWICHIは、現在BAD HOPが開催している全国20都市を巡るツアー『BAD HOP MOBB LIFE TOUR』にも参加しており、『SPLASH』のリリースもあわせ、ますます活躍の場を広げることだろう。そんなKOWICHIと<FLY BOY RECORDS>の代表曲に、レーベル一丸となり音楽活動に向き合うことを宣言した「バイトしない」のほか、2017年3月発表の「1人でしない feat. DJ TY-KOH & YOUNG HASTLE」がある。同曲は、KOWICHI、そして盟友のYoung Hastleが、<FLY BOY RECORDS>の仲間によって自身の音楽活動が成り立っていると歌う、支え合いの精神を描いた楽曲。

 

DJ TY-KOH「バイトしない feat. KOWICHI & YOUNG HASTLE Prod. by ZOT on the WAVE」

 

 そんな「1人でしない」には、2013年4月より放送されたTVアニメ『ラブライブ!』及び2015年6月に全国ロードショーとなった『ラブライブ!The School Idol Movie』と共通のメッセージ性を読み取ることができる。

KOWICHI「1人でしない feat. DJ TY-KOH & YOUNG HASTLE」MV

「1人でしない」 ※KOWICHIのバースより抜粋

俺のソロアルバム 仲間たちと企む

音をもらってバースを書く

録れたら仲間に聴いてもらう

意見言い合う 曲が良くなる

1人じゃない制作 全国各地回る

 

1人じゃ無理できない 支えられてるLIFE

1人でしない 恵まれてる仲間とFLY

1人でしない 俺たち1人でしない

仲間とやる1人でしない 俺たち1人でしない

 

 ラブライブ!』に登場するスクールアイドル・μ’sは、東京神田に住む高校2年生の高坂穂乃果からはじまった。穂乃果の通う音ノ木坂学院は、入学希望者の減少により統廃合の危機に。穂乃果は学校を救うべく、幼馴染の園田海未南ことりとともにμ’sを結成。その後、作曲を担う西木野真姫や、かつて同校でスクールアイドル活動をいち早く始め、同時に挫折を経験した矢澤にこをはじめとするメンバー9名が集い、切磋琢磨する物語だ。そんな同作より、第1期6話「センターは誰だ?」を紹介したい。同エピソードは、まだμ’sが1年生と2年生各3名、そして3年生の矢澤にこの7名で構成されていた頃のものだ。μ’sの始動者であるはずの穂乃果の普段見せる適当な振る舞いに、「本当にμ’sのリーダーなのか」と疑問に思うにこ。メンバーの話を聞くうちに、穂乃果がリーダーらしい務めを果たしていないと知る。結果、にこはグループのセンターを誰が務めるべきか決めるべきだと迫るのだった。同エピソードでは、最終的にセンター不在かつ穂乃果が改まった仕事を務めずとも、彼女の姿勢がリーダーの器に足るものだとメンバー全員が感じ決着がついた。

 

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 μ’s内のメンバーの関係性は、<FLY BOY RECORDS>にも通じる。μ’sでは、作詞を海未、作曲を真姫、衣装制作をことりが担当。穂乃果はそれらに大きく関わることがないものの、同グループのフロントマンを担っている。つまり、μ’sのメンバーは“全員主役”なのであり、穂乃果1人や他のメンバーだけで活動で成り立っているのではない。μ’sは9人が揃い、はじめてμ’sとなるのだ。これは「1人でしない」で歌われている<FLY BOY RECORDS>の制作模様と共通しており、トラックメイカーのZOT on the WAVEから<音をもらってバースを書く>とは、μ’sにおいてまさに真姫と海未の関係を指しているのだ。(ラッパーは自身のリリック<歌詞>を自らで制作するため、ここでは穂乃果=KOWICHIの構図とはならない)また、ことりの衣装があってこそ、μ’sは初めてステージに立てるのであり、楽曲や衣装制作の全てをとおして<1人じゃない制作>といえるのだ。

 

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 あわせて、『ラブライブ!』第2期6話「ハッピーハロウィーン」も紹介したい。同エピソードでは、秋葉原ハロウィーンイベントにμ’sが招待され、同ステージにて新たに披露する楽曲を制作する。同じくイベントに参加するA-RISEと対抗できるような、これまでのμ’sとは異なるインパクトを残したいとメンバーは試行錯誤。部活のユニフォームや、ヘヴィメタルバンドの衣装を着用するなどで、これまでのイメージを大きく変えようとするも失敗。メンバーの意見をひととおり採用した結果、これまでのμ’sの良さが見えなくなってしまったのだ。結果、メンバーは自分たちらしくステージに立つことを決意し、新曲として「Dancing stars on me!」を披露。このエピソードには、「1人でしない」の<意見言い合う / 曲が良くなる / 1人じゃない制作>という部分が意図せずとも重なるよう描かれている。μ’sがパフォーマンス向上を望み、意見を出し合う姿は、まさに<FLY BOY RECORDS>の姿勢そのものであり、これも決して“1人で”できるものではない。「Dancing stars on me!」が誕生する過程まで遠回りにはなったが、μ’sはメンバーが知恵を出し合うことで、よりメンバー間の絆を深めることができた。「ハッピーハロウィーン」は、いわば「1人でしない」そのものなのである。

 

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 最後に、『ラブライブ!The School Idol Movie』にも触れておきたい。同作では、μ’sはアメリカ・ニューヨークにてライブを披露。しかし、ライブ前夜に穂乃果がメンバーとはぐれ、ニューヨークの街を彷徨うことに。そんなとき、穂乃果は1人の日本人女性シンガーに出会う。彼女は日本で友人たちと音楽活動をしていたが、最後には解散してたことを明かす。μ’sも3年生の卒業を控え、その一方でラブライブ!のために活動を続けるかを悩む状況で、彼女は解散の際に何を考えたのかと穂乃果は問う。女性シンガーは、その答えは“簡単”なものだったことだけを告げ、穂乃果の前から姿を消す。帰国後、穂乃果をはじめとするメンバーはμ’sが国内で爆発的人気を巻き起こしていることを知り、“μ’sをやめないでほしい”という声を受ける。スクールアイドルとして最後まで生きるか、μ’sを続けるのかを悩んだとき、穂乃果は女性シンガーに再会。そこで彼女とともに見たのは、まだ自分が幼かった頃、無邪気に公園の水たまりを飛び越えようとしていた姿。それを見て、あの頃と変わらない”ただ楽しい”スクールアイドル活動に夢中な自分に気付く。スクールアイドルとして輝くこと(=その瞬間を全力で楽しむこと)を選んだとき、穂乃果は「いつだって飛べる」と呟くのだった。『ラブライブ!』において、“飛ぶ”という行為は“輝くこと”と同義であり、その全てはアイドル活動における楽しさから生まれるものだった。つまり、μ’sの音楽活動は“飛ぶ(=FLY)ことなのである。これは<FLY BOY RECORDS>でも同様であり、ラッパーとして成功し大金を得ること、そして音楽を楽しむことは『ラブライブ!』における“飛ぶ”という行為そのものなのだ。KOWICHIとYoung Hastle、そして<FLY BOY RECORDS>は、“飛んで”おり。それは<FLY BOY RECORDS>というレーベルタイトルを見れば明らかだろう。<FLY BOY RECORDS>の音楽活動は、まさにμ’sと同じ輝きを持っているのであり、彼らもまた「SUNNY DAY SONG」を披露したスクールアイドルの一員なのである。<すごいのはA-RISEやμ’sだけじゃない>、<FLY BOY RECORDS>もまたスゴいレーベルなのだ。

 

 『ラブライブ!』シリーズより、静岡県沼津市を舞台に少女たちの成長を描く『ラブライブ!サンシャイン!!』も、第2期がもうまもなく幕を閉じる。彼女たちの物語が終わるとき、スクールアイドルであるAqoursは何を掴むのか。Aqoursの物語の行く末に想いを巡らすとき、<FLY BOY RECORDS>の楽曲が何かヒントを与えてくれるだろう。今後さらなる輝きを放つであろう、Aqoursと<FLY BOY RECORDS>の背中を温かく見守っていきたい。

内浦、スクールアイドル、寺生まれの女子高生……『ラブライブ!サンシャイン!!』にこめられたメッセージを楽曲の歌詞より紐解く

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 「パンチライン」という言葉がある。HIPHOPにおける、楽曲の歌詞中でもっとも印象深いフレーズを指す言葉だ。静岡県沼津市内浦を舞台に、スクールアイドル・Aqoursの成長を描く、現在放送中のTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(TOKYO MXほか)の楽曲においても、リスナーの心を動かすようなパンチラインが数多く存在する。本稿では、同作の現在発表されている楽曲より、とりわけ印象に残っているフレーズを5つ紹介したい。

 

夢で夜空を照らしたい

<消えない 消えない 消えないのは 今まで自分を育てた景色>

 TVアニメ1期第6話挿入歌。歌唱当時6人であったAqoursが、地域の催しで披露した楽曲だ。物語の舞台となる内浦は、作中にて田舎町として描かれているが、そんな町のことを愛し、その土地への感謝が歌われている。そして、当時彼女たちの憧れであった、スクールアイドル・μ’sの姿を追っていたAqoursμ’sと比較し、自分たちの活動に明確な展望が見えずも、地元の仲間とともに、内浦の地より大きな夜空を照らしたいという願いが感じられる。

 HIPHOP的な側面では、hood(地元)は非常に重要なファクトのひとつであり、それは近年の日本語ラップシーンを牽引するラッパーKOHHも、「結局地元」という楽曲を制作するほど。”この地から羽ばたく”という宣言をこの楽曲で行ったAqoursは、非常にHIPHOPな存在であり、まさしく<君のhoodじゃmaybe見ないタイプ>(「Check My Ledge」/ IO)なのではないだろうか。

 

「待ってて愛のうた」

<目を閉じて聞いていたよ / くりかえす波の音を / 今日は静かに流れてく / すれ違うひともなくて / ひとりきり歩く道で ラララ…口ずさむ愛のうた>

 2ndシングル『恋になりたいAQUARIUM』カップリング曲。まだ大人になりきれない高校生が愛を考えたとき、その壮大さに思わず切なさを感じる姿が描かれている。この楽曲の歌詞は、μ’sにはなかった、とてもAqoursのオリジナリティ溢れるものだ。「波の音」という言葉は、前作『ラブライブ!』の舞台である東京都神田では聴けず、Aqoursだからこそリアルに伝えられる要素である。劇中で描かれる、高海千歌の実家前をはじめとする、内浦の海岸線沿いを歩きながら、Aqoursのメンバーがこの歌を口ずさむ様を想像できるだろう。自分ひとりの環境で、凪の穏やかさに身をあずけられる環境で歌われることで、「待ってて愛のうた」は初めて成立するのではないだろうか。

 また、<愛のうたの香りは / 潮風より青くて / もっと確かめたい香りさ / 青く切ない香りさ>というフレーズでは、「潮風」という言葉が非常に印象に残る。少し切ないピアノのメロディも相まり、聴く人を自然と作品へと引き込む力を持っている。

 

ユメ語るよりユメ歌おう

<ユメを語るコトバより / ユメを語る歌にしよう / それならば今を伝えられる気がするから>

 TVアニメ第1期エンディングテーマ。「輝きたい」という一心でスクールアイドルを始めたAqours。そんな彼女たちの「ユメ」は、高校生ではまだ確かな言葉にすることはできず、代わりに”歌”という形で想いへと昇華されるのだろう。また、<それならば今を伝えられる気がするから>というフレーズは、非常に『ラブライブ!』シリーズの文脈と内容に即したものだ。前作『ラブライブ!』において、「今」とは「輝き=楽しむこと」のメタファーであった。限られた今を楽しむからこそ輝きがある。そんなスクールアイドル的な思考も、この楽曲には反映されている。

 さらに、Cメロ後半部の<Singing my song for dream!>というコーラスも大変美しく、毎話毎話をこの曲が彩っていたことで、Aqoursの次なる物語を毎週楽しみにできたのではないだろうか。また、2番では<ユメ>という歌詞が<ミライ>に置き換わる。彼女たちの<ユメ>が<ミライ>へと繋がっていく過程が、『ユメ語るよりユメ歌おう』の歌詞によって高らかに歌われているのだろう。

 

恋になりたいAQUARIUM

<なんで水のなかでも息ができるの? / たぶんさっき飲んだ熱いお茶のせいかな / まあそんなことは 気にしないっ しないでっ / サカナたちのパーティー 楽しもうか>

 2ndシングル『恋になりたいAQUARIUM』表題曲。なぜ水のなかでも息ができるのか。国木田花丸曰く、「熱いお茶を飲んだから」とのことだ。全く意味がわからない。ただ、国木田は、寺生まれの女子高生である。のっぽパンを食い、ルビィと暮らしてきた。けれども水のなかでも息ができる道理に関しては、人一倍に敏感であった……そんな「恋になりたいAQUARIUM」の歌詞は、非常に『ラブライブ!』観の詰め込まれたものだ。「”なぜ水のなかで息ができるのか」という問いに対し、先述のように「熱いお茶を飲んだから」というトンチな回答をしているにも関わらず、次の瞬間には「そんなことは気にしない」と一蹴している。細かいことは全く気にせず、ただひたすらに突き進む『ラブライブ!』的な感覚を感じられることだろう。佐々倉有吾による「恋になりたいAQUARIUM」のサンバ的なビートもあり、非常に愉快なダンスナンバーだ。

 

HAPPY PARTY TRAIN

<ステキな旅に出よう / 人生ってさ… たくさんの場所へ続いてる ワクワクだらけさ!>

 3rdシングル『HAPPY PARTY TRAIN』表題曲。今年9月まで開催された『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 2nd LoveLive! HAPPY PARTY TRAIN TOUR』のテーマソングということもあり、この楽曲に思い入れの深いファンも多いのではないだろうか。ライブ会場では、SLが各会場の駅名を猛スピードで通過していく映像に気持ちを奮い立たせられ、気付けば終着駅の沼津へとSLは駆け抜けていった。Aqoursと共に過ごした、ひと夏の思い出を呼び起こされる一曲だ。

 そんな同曲では、先述のフレーズがもっとも感慨深い。これまで、『ラブライブ!』シリーズでは恋愛や友情をはじめ、多くの事象が歌われてきた。その一方、ここまで明確に「人生」を語った楽曲は生まれてこなかった。そして、このフレーズを歌っているメンバーは、国木田花丸だ。国木田は、寺生まれの女子高生である。寺生まれの女子高生に人生を説かれる場面は、生きているうちで数少ないものだろう。そんな彼女の語る人生とは、「たくさんの場所へ続く」もの。今後ますます活躍の場を拡げるであろうAqoursの、明るい未来へと向かう想いが込められているのではないだろうか。

 さらに、<人生ってさ…>というフレーズは、ライブにてパフォーマンスを行う高槻かなこ国木田花丸役)も、歌唱の瞬間だけ時間がゆっくり流れる感覚を覚えるという。たしかに、このフレーズだけはそんな独特の雰囲気を感じられる。人生を歌うこのフレーズだけは、国木田花丸が歌ってこそはじめてたしかな意味を持つのだろう。『ラブライブ!サンシャイン!!』楽曲史上、現在もっとも心に響く1フレーズといえる。


 Aqoursは、アニメやキャラクターボイスを務める声優によるライブが盛り上がることで、今後さらに輝きを増すことだろう。今回紹介したフレーズや、そのほかの楽曲の歌詞。そして、内浦の地に寄り添いながら彼女たちの音楽に耳を傾けることで、また新たな輝きを覗けるかもしれない。

内田彩、自身のアーティスト活動にアップデートを掛けたライブ『ICECREAM GIRL』

はじめに <ライブに足を運ぶこと>

私は音楽が好きで、ライブによく足を運びます。

いきなりですが、コンサートプロモータズ協会のホームページによると、昨年は総計29,862本のライブが敢行されたそうです。

そのうち、私は今年、いくつかのライブに足を運びました。

さて、皆さんがライブに行かれるとして、その理由はどのようなものですか。

娯楽をはじめ、時には失恋や暇つぶし等々、様々な理由はあると思います。

ただ、私の場合、それは元気をもらいたいからという理由に帰結する気がします。

今日も私はたくさんの元気を貰ってきました。そんな話をしようと思います。

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AYA UCHIDA 「ICECREAM GIRL」 最速フル視聴イベントに参加した話

『ICECREAM GIRL』発売記念 最速フル試聴イベント

本日は青山Editionにて開催された、AYA UCHIDA 『ICECREAM GIRL』発売記念 最速フル試聴イベントに参加して参りました。

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内田さんのソロ活動としては初のアルバム先取り視聴会、そしてなんと限定100名ということで「本当に当たるのか…」と恐れていたのですが、無事に当選し参加することができました。

アルバムが先取りで聴ける、しかもハコ!家のボロいスピーカーじゃ聴けないような音も聴けちゃうぞ!ってことで嬉々として参加して参りましたので、今回はその恩返し…くらいのキモチでレポートが書ければと思います。

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